『ITF WORLD TENNIS TOUR JUNIORS 2026年版 規定』完全運用ガイド

クレーコートに置かれたテニスラケットとボールたち
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先日発表された『ITFジュニア大会2026年版の最新レギュレーション(規定)』の公式原文(英語)日本語訳版をダウンロードできるようにしました。

しかし、全文をすべて読むのは大変なので、選手・保護者・コーチそれぞれが特に理解すべき重要ポイントを整理し、実務で役立つ形でまとめました。

公式原文(英語)

https://www.itftennis.com/media/15480/2026-itf-world-tennis-tour-juniors-regulations.pdf

日本語訳版

目次

第一章:出場資格と年齢制限

選手の健康、安全、学業、長期的なキャリア形成を守るため、明確な年齢制限と年間出場上限が定められています。

出場できる年齢

基本ルールは “13歳から18歳まで” です。

  • 13歳の誕生日を迎えた選手から出場可能
  • 18歳の年末まで出場可能

これが ITFジュニア競技人生の“有効期間” です。12歳以下の選手は、たとえ実力があってもITFジュニアには出場できません。

年齢ごとの年間出場可能数

若い選手ほど身体・精神・学業に配慮が必要であるため、ITFは年間出場数に制限を設けています。

年齢出場できる大会数
18歳制限なし
17歳制限なし
16歳25大会
15歳18大会
※ジュニア世界ランクTop20で +4大会
14歳14大会
※ジュニア世界ランクTop20で +4大会
13歳10大会
※ジュニア世界ランクTop50で +4大会
11〜12歳0

補足
①「出場大会数」にはシングルス/ダブルス/予選 すべて含まれる
③年間のカウントは、誕生日から翌年の誕生日前日まで

適切な量の大会経験と、成長のバランスを取ることが大切であるという前提に立っています。

第二章:出場のために必須となる登録

以下は 全選手に義務付けられているもの です。

  • IPIN登録(国際選手登録番号)
    ITF競技に参加するための選手IDで、すべてのエントリー・結果・ランキング管理の基盤となります。
  • 年間登録料の支払い
    有効な登録状態でなければ大会エントリーはできません。
  • 指定オンライン講習(ITF Academy)の受講
    ジュニア選手の安全・倫理・競技理解のために義務化されています。
    未受講の場合は エントリー停止・出場不可 になる場合があります。

出場に向けた推奨準備

義務ではありませんが、現場で困らない・詰まないために必ず準備すべき現実的項目です。

  • 海外医療保険(治療費が非常に高額な国が多い)
  • 英文診断書を取得できる医療機関の把握
  • パスポートの有効期限確認(原則6か月以上推奨)
  • VISA・入国条件の確認
  • 未成年出国・入国同意書(国により必要)

これらは 大会よりも“命と安全”に関わる領域です。
遠征前の事務準備は、競技力と同じくらい重要な要素と考えてください。

第三章:ランキングの仕組み

ITFジュニアランキングは、質(どの大会で・どれだけ勝ったか)を評価する仕組み になっています。

ランキング対象となる大会

ランキング対象となるのは、以下のITF公認大会です。

  • グランドスラム(ジュニア)
  • ITF Junior Finals / J500
  • J300
  • J200
  • J100
  • J60
  • J30

大会のグレードが高いほど、得られるポイントも大きくなる仕組みです。

第四章:ランキング計算の基本ルール

勝った大会の“ベスト6”だけが本当に意味を持ちます。

内容ルール
計算期間過去52週間
シングルスベスト6大会の成績だけが反映
ダブルスベスト6大会のうち 1/4(実質1大会分)加算

つまり…
①たくさん出ても “勝っていない大会” のポイントは意味が薄い
戦略=「出場数」ではなく「勝てる大会を選ぶ力」

つまり、「出場数」ではなく、「適切な大会選択」と「勝率」の方が圧倒的に重要です。

第五章:ランキングポイントの仕組みとポイント表

「どれだけ勝てたら何点入るか」を知り、計画を立てましょう。

シングルス ポイント表

シングルスは以下の通り、グレードが高いほど大きなポイントが得られます。

グレード優勝準優勝SFQFR16R32
Grand Slam / Youth Olympics100070049030018090
ITF Junior Finals1000700550/490420/360/320/260
J5005003502501509045
J3003002101401006030
J200200140100603618
J100100603620105
J60603618105
J303018952

ダブルス ポイント表(1/4が加算)

ダブルスもランキングに影響しますが、シングルスよりも少ない配点となっています。

グレード優勝準優勝SFQFR16
Grand Slam / Youth Olympics750525367225135
J50037526218711267
J3002251571057545
J200150105754527
J100754527157
J604527147
J30251363

重要ポイント
・基本的に「1回戦に勝つ」ことが最低条件
・不戦勝(相手が棄権)も勝利扱い
・決勝が天候等で中止になった場合、準優勝ポイントが与えられる場合がある

第六章:試合形式(フォーマット)について

日本国内の大会と“同じ”ではありません。
大会レベルや種別ごとにフォーマットが異なるため、事前理解が必要です。

項目ルール
シングルス(上位大会)3セットマッチ
J60 / J30 / 多くの予選2セット+スーパータイブレーク
ダブルス2セット+スーパータイブレーク
デュースノーアド方式
レットノーレット

第七章:エントリー運用と締切管理

ITFジュニアで「最も多くのトラブルが起こる」のが、このエントリー運用の領域です。

締切の仕組みと、現代ITFの運用における最大のポイントである Priority(優先順位)管理 について整理します。

基本スケジュール

ITFジュニアの大会は、世界共通のスケジュールで運用されています。

項目期限
エントリー締切大会約20日前・火曜14:00 GMT
取り消し締切(Withdrawal Deadline)大会約13日前・火曜14:00 GMT
Freeze Deadline大会前週 水曜14:00 GMT

Priority(優先順位)管理について

ITFは、「同じ週の複数大会にエントリーする」ことを禁止していません。

むしろ、適切に運用することで、安全により良い大会へ出場するための有効な仕組みとして設計されています。

Priority管理の基本

同じ週に複数大会エントリーは 可能。その際、選手は必ず Priority(優先順位) を設定します

例)

  • 第1希望:J300
  • 第2希望:J200
  • 第3希望:J100

締切後、ITFが出場可否を判定

締切後、ITFは以下を判断します。

  • Accepted(出場可)
  • Qualifying(予選)
  • Alternate(補欠)

そして、 “優先順位が高い大会” の中で、Accepted(本戦でも予選でも)になった大会に自動で確定。 他の大会は 自動でキャンセルされます。

原則、選手が手動で操作する必要はありません

ITFが “一番良い結果の大会” に自動で割当

例)

  • J300 → 補欠(Alternate)
  • J200 → 予選 Accepted
  • J100 → 本戦 Accepted

上記の場合、J200 の予選に出場が確定します。

予選・本戦関わらず、出場できる上のグレードが優先されるという認識で良いと思います。

■重要な理解ポイント
・本戦か予選かは関係ありません
・グレードの高い大会で Accepted になった場合
  たとえ下の大会で本戦確定でも、上位大会(予選含む)に残されます

Freeze Deadlineで完全固定

Freeze Deadline(大会前週水曜14:00 GMT)を過ぎると:

  • その週の大会は 完全確定
  • 変更不可
  • キャンセル= 遅延棄権扱い(ペナルティ可能性)

注意(よくある誤解)

「優先順位つければ絶対安全」ではない
→ Freeze Deadline 以降の操作は危険

「並走すると違反」ではない
→ “Priority管理なしの適当並走” が危険


■重要ポイント
①20日前が申込み締切
②13日前までは自由に撤退可能
③同週複数申込みOKだが Priority管理必須
④Freeze Deadline を過ぎると固定(要注意)

第八章:欠場・棄権・遅刻について

誤った欠場や不適切な手続きは、選手の評価を損なうだけでなく、ランキングや将来の大会参加にも影響を与える場合があります。

この章では、欠場・棄権・遅刻がどのように扱われるのかを整理します。

事例結果
試合に来ない重いペナルティ
遅刻棄権年3回免除枠あり(だが乱用不可)
途中棄権医師証明必要な場合あり
医療証明なし棄権ポイント没収の可能性

試合に来なかった場合(No Show)

大会会場に現れない、または正当な理由なく試合を放棄した場合、非常に重いペナルティの対象となります。

ITFは「国際大会に申し込む責任」を厳しく評価しており、安易な放棄や未連絡の欠場は、選手としての信頼喪失に直結します。

遅延棄権(Withdrawal after deadline)

取り消し期限(Withdrawal Deadline)を過ぎてからの棄権は、やむを得ない事情を除き 好ましくない行為 と判断されます。

ただし、年に 最大3回まで救済枠(保護免除) が認められています。

これは、体調不良や移動トラブルなど、完全に防げない事態に備えた安全弁として設計されていますが、乱用は推奨されません。

試合途中棄権(Retirement)

試合中に怪我や体調不良によりプレー続行が不可能となる場合は棄権が認められます。
ただし、必要に応じて 医師の診断書や正当性の証明 が求められる場合があります。

不正な理由による棄権

“気が進まない”“勝てないから” など、不適切な理由による棄権や虚偽説明は、国際的な競技倫理に反する行為として重く扱われます。

第九章:行動規範

ITFジュニア大会は、ただ競技結果を争う場ではありません。

国際的なスポーツマンシップと人格形成の舞台であり、それを守るために 明確な行動規範が定められています。

行動規範の対象者

行動規範は 選手だけのルールではありません。

  • 選手
  • コーチ
  • 保護者
  • チーム関係者

大会会場で関わるすべての人が対象です。

罰則の対象となる行為

以下のような行為はペナルティ対象となります。

  • ラケットを叩きつける、破壊する等の行為
  • 不適切な言葉遣いや暴言
  • 威嚇・挑発・侮辱行為
  • 明確な態度不良
  • コーチング違反(規定外の指示)
  • 審判への過剰な抗議
  • 規律を乱す行為

ペナルティの段階

基本的には次のような段階を踏んで処分が進みます。

①警告(Warning)
②ペナルティポイント(Point Penalty)
③ゲーム喪失(Game Penalty)
④失格(Default) → さらに重い制裁に至る可能性あり

チーム責任という考え方

世界の大会では、保護者やコーチの態度が、選手の責任として扱われる場合があります。

親やコーチの行為によって選手が不利になることもあるため、「チーム全体の品格」が求められる競技環境であることを理解しておく必要があります。

第十章:医療・安全・気象対応について

ITFジュニアでは、選手の安全を最優先とする考え方が徹底されています。
そのため、医療対応・体調管理・気象条件に関するルールが整備されています。

医療対応について

試合中にケガや医療処置が必要になった場合、医療タイムアウトが認められるケースがあります。

ただし…

  • 対象となる症状には明確な基準がある
  • 単なる疲労は対象外
  • 診断が必要な場面もある

など、無制限に認められるものではありません。

熱中症・体調管理

暑さや過酷な環境での試合では、選手の安全を守るための気温・湿度に関するガイドラインが適用される場合があります。

トイレ休憩・着替え休憩

  • 回数・タイミングにルールあり
  • 試合進行を妨げる行為は認められない

天候・雷などの異常気象

  • 試合中断、スケジュール変更はITF裁量
  • 安全が第一
  • 混乱時はスーパーバイザーに従うことが最優先

第十一章:アンチ・ドーピングについて

ITFジュニアも、国際競技の一部として、アンチ・ドーピング規程が適用されます。
ジュニアカテゴリであっても例外はありません。

基本的な考え方

  • ドーピングは 重大な不正行為
  • 単なる薬物使用だけではなく、サプリメント・治療薬なども対象

注意すべきポイント

  • 市販サプリメントにも禁止物質が含まれる場合あり
  • 「知らなかった」は免責理由にならない
  • 必要な場合は申告手続あり

遠征・費用・渡航実務について

ITFジュニアの大会運用は、競技力だけでなく、移動計画・費用管理・安全対策 といった実務能力も強く求められます。

この章では、遠征を現実的に進めるために知っておくべき内容を整理します。

遠征費用について

海外遠征では、以下の費用が基本となります。

  • 航空券
  • 宿泊費
  • 食費
  • 現地交通費
  • コーチ帯同費(帯同する場合)
  • エントリー費・練習コート費用
  • 保険費用

大会によっては、宿泊サポートや定額パッケージが用意されている場合もあります。
事前に大会情報を確認し、費用シミュレーションを行うことが重要です。

滞在計画

大会は必ずしも予定通り進むとは限りません。

  • 雨天延期
  • 試合順変更
  • 進出ラウンドによる滞在延長

これらを見越して、余裕あるスケジュール設計 を行う必要があります。


渡航書類・安全管理

  • パスポート有効期限(原則 6か月以上推奨)
  • VISAが必要な国の確認
  • 招待レターの取得が必要な国の確認
  • 未成年単独渡航規制(国により親同意書が必要)
  • 医療保険加入

これらは 大会以前に“入国できるかどうか”に関わる重要事項です。

第十二章:Acceptance/Alternate/Lucky Loser の実務について

大会に申し込んだ後、「Accepted」「Alternate」「Lucky Loser」など、さまざまな状況が発生します。

これらの正しい理解は、現場で迷わず動くための鍵となります。


Acceptance(出場確定)

  • 本戦 Accepted
  • 予選 Accepted

この場合、出場は確定です。
以降は大会スケジュールと会場入り計画を進めます。

Alternate(補欠)

Alternate とは 参加可能枠が足りず、補欠待ちの状態を指します。

  • 予選補欠
  • 本戦補欠

補欠順位はランキングで決まり、直前で繰り上がる可能性があります。

Lucky Loser(LL)

以下のような場合に適用されます。

  • 予選に出場
  • 予選で敗退
  • しかし本戦選手の欠場が発生

このとき、本戦入りのチャンスとして Lucky Loser になる場合があります。
順位は、予選成績とルールに従い公平に決定されます。

実務で重要なこと

  • 繰り上がりを狙う場合は、現地待機が必要
  • 「いつまで残るべきか」はスーパーバイザーの指示を確認
  • 情報更新を常にチェック

第十三章:コーチ・保護者の責任について

ITFジュニアでは、「選手だけの大会」ではなく「チームとしての参加」という考え方が強く求められます。

コーチの役割

  • 戦術・技術指導
  • 試合運営理解
  • トラブル対処
  • 行動の模範となる存在

コーチの行動は、選手の信用・評価そのものに直結します。

保護者の役割

  • 遠征サポート
  • 健康管理
  • 安全面の確保
  • 感情的サポーターとしての適切な関わり

ただし、過剰な介入や不適切な言動は ペナルティ対象となる場合があります。

チーム責任の考え方

ITFは「選手だけでなく、その周囲の大人の責任」も非常に重視しています。

  • コーチング違反
  • マナー違反
  • 暴言
  • 審判トラブル

これらはチーム全体の責任として扱われ、結果的に 選手が不利になるケース もあります。

第十四章:初参加選手・保護者のためのチェックリスト

初めて ITF ジュニアに挑戦する場合、「何から手をつければよいか分からない」 という不安は当然です。

そこで、実務目線で役立つチェックリストを整理します。

出発前チェック

  • IPIN登録完了
  • ITF講習受講済み
  • パスポート確認
  • VISA・入国条件確認
  • 医療保険加入
  • 参加大会・会場情報確認
  • エントリー状況確認(Priority含む)

渡航前最終確認

  • フライト予約
  • 宿泊確保
  • 大会スケジュール確認
  • 練習コート情報確認
  • 大会連絡先確認

現地入り後

  • 会場確認
  • コートサーフェス確認
  • 気候・環境確認
  • 健康・食事管理
  • 大会スタッフとのコミュニケーション

試合前

  • 試合時間確認
  • ウォームアップ計画
  • 装備最終点検
  • メンタル準備

帯同者の役割

  • 落ち着いた行動
  • 過剰介入しない
  • トラブル時は冷静にスーパーバイザーへ
  • 選手の挑戦を支える存在であること

最終まとめ

ITFジュニアは、選手の競技力だけでなく、家族・チームの“運営力”が求められる世界です。

  • 年齢・出場数の理解
  • ランキングとポイントの理解
  • 締切管理とエントリー運用
  • 行動規範と安全
  • 遠征・運用の実務
  • チームとしての責任

これらをしっかり理解し、冷静かつ前向きに取り組むことで、選手の挑戦はより充実したものになります。

クレーコートに置かれたテニスラケットとボールたち

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