ジュニアテニスの費用はいくらかかる?―― 小学生・中学生・高校の“二極化”まで、リアルな総額と家族の指針

テニスとお金の関係
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ジュニアテニスという世界には、ずっと口に出されづらいけれど、誰もが感じている“重たいテーマ”があります。

それが お金 です。

コートに立つのは子どもですが、その背後で、家族は何度も計算し、悩み、迷い、踏み出してはまた立ち止まります。

「いったい、どこまで背負えばいいのか」
「本当に前に進めているのか」
「うちの選択は、間違っていないだろうか」

そんな気持ちを抱えながら、それでも子どもは今日も全力でボールを打ち続ける。
だからこそ、このテーマは真剣に、そして誠実に語る価値があります。

この記事は、ただ「ジュニアテニスはいくらかかります」と数字を並べる記事ではありません。

「お金」と「夢」をどのように両立し、現実の中でどんな選択をしていくのか。
そのための視点と指針を、できる限り丁寧に、一緒に整理していきます。

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目次

ジュニアテニスにかかるお金 ――まず、現実はどうか?

結論から言えば、ジュニアテニスは 安いスポーツではありません。
しかし、“ただ高い”と言ってしまうと、それで話が終わってしまいます。

重要なのは、

  • なぜ費用が増えるのか
  • どの段階で負担が跳ね上がるのか
  • 何のために払っているのか

この理解です。

年間費用の目安を、大きく整理するとこうなります。

■年間費用の目安
小学生(国内中心): 50〜100万円
中学生(国内大会〜ITF挑戦期):100〜500万円
高校生:60万円〜“2,000万円超”

ここまで見て、「高校生だけ桁が違う!?」
そう感じた方も多いでしょう。

その感覚は、正しいです。

ジュニアテニスの世界は 高校で大きく“二極化”します。
この話は後でじっくり触れます。

でもまずは、「どこにお金が消えていくのか」を順番に整理していきましょう。

お金は“どこ”にかかっているのか?

ジュニアテニスの費用は、大きく次の5つに分類できます。

① スクール・クラブチームへの所属費用

テニスを“習い事”として続けるのか、“競技”として取り組むのか。
それとも、プロの道を最短で目指していくのか。

その差が、費用にも表れています。

■スクール・クラブチームの費用感
・習い事レベルの一般ジュニアクラス:月 5,000円〜1万5,000円
・競技志向の選手クラス:月 3万〜12万円
・プロへの道を目指す専属サポート/帯同体制:月 30万円規模という例も存在

ここは「何を求め、どこまで覚悟するか」 を問われる領域です。
金額の差は、都市部と地方との格差が大きいように感じます。

地方によっては、全日本レベルの選手が月2万円以内で通うクラブチームも存在しています。 東京の名門では10万円は超えます。

② プライベートレッスン

費用感は、コーチの知名度や経験値によって違うようです。

■プライベートレッスンの費用感
2時間 → 1〜4万円
※コート代 は別途かかることが多い

効果は分かっている。
やれば伸びることも知っている。
だからこそ――難しい。

プライベート多くの親御さんが言います。

「気づいたら毎月すごい金額になっていた」

これは珍しい話ではありません。
むしろ“普通”です。

③ トレーナー・フィジカル・ケア

実は“勝ち負け以上”に大切な投資がこれです。

■ トレーナー・フィジカル・ケアの費用感
1時間 →3,000〜1万円

フィジカル、体づくり、怪我の予防。
短期結果と関係ないようでいて、実は競技寿命に直結します。

ここを削って怪我をして、夢そのものが途切れる選手を、何人も見てきました。

だからこれは「贅沢」でも「余計」でもありません。
未来を守るコストです。

④ 大会エントリー費 & 遠征費

ここから、費用が跳ね上がります。

エントリー費だけを見ても――

  • 都道府県大会:約4,000円
  • 地方大会:約9,000円
  • 全国大会:約11,000円
  • ITFジュニア:約12,000〜18,000円

まだ、これだけなら“現実的”に見えるかもしれません。
問題はここからです。

遠征には、

  • 交通費
  • 宿泊費
  • 食費
  • 同伴者費用

そして、さらに帯同コーチの費用がかかります。

■ 帯同コーチ費

■帯同コーチの費用感
1日:1万〜2万円+コーチの交通費、宿泊代

これが数日、数大会、年間に重なっていく。
ITFの海外遠征を3週間まわると21日分です。

この数字は 「現実的」から「重たい」に変わります。
しかし、これもまた事実です。

⑤ 用具費

静かに積み重なる現実がこれ。

  • シューズが減る
  • ガットが切れる
  • ウエアを買い換える
  • ラケットが必要だ

■用具の費用感
年間 :10〜50万円

“静かだけど確実に減っていく財布”。
多くの家庭が感じている、リアルな現実です。

そして――高校で、世界は“2つ”に分かれる

高校世代は、はっきりと 2つの道 に別れます。

「高校テニスメイン」という、極めて現実的で強い選択

  • 強豪校
  • 学校中心の練習体制
  • 遠征も学校主体
  • 学校によっては費用補助もある

■高校テニスメインの費用感
年間:60〜200万円

これはただの「安く済ませる選択」ではありません。

✔ 仲間と競う
✔ チームで戦う
✔ 経済的に破綻しにくい
✔ それでも“強くなれる”選手は実在する

これは、とても優れた選択肢です。

さらに高校ではそれぞれの学校が用意する特待制度があり、遠征費も出してくれる学校も存在します。
金額の差は、ITFジュニアにチャレンジするかの差によります。

「プロ/世界挑戦」――覚悟の選択

  • 海外に拠点
  • ITFを転戦
  • トレーナー・分析・帯同がセット
  • 語学・教育・生活も含む“総合投資”

■プロ/世界への挑戦する費用感
年間 :500万〜3,000万円超(青天井)

海外トップアカデミーの例を見ても…

  • Rafa Nadal Academyの年間プログラムは約6万〜7万ドル(約900〜1,100万円前後)という報告あり(施設・宿泊・食事込み)
  • IMGアカデミー の年間スポーツ留学は概ね8万5,000〜9万1,000ドル(約1,200〜1,300万円台)という情報あり

これらは「寮・学業・テニス育成」を合わせて総合的に提供するプログラムであり、日本の高校とはまったく異なる投資フェーズです。

さらに、

  • 海外に拠点を置いて競技に集中する
  • 長期滞在とトレーニングを合わせる
  • プロ転向を視野にした育成体系で進める

という選択になると、 年間1,500万円〜3,000万円 が現実的なレンジになります。

これは単に「お金を使う」のではなく、家庭+コーチ+支援団体+スポンサー契約などを組み合わせた“総合的な育成戦略”が必要になる世界です。

節約できるもの/削るべきではないもの

ざっくりとですが、「節約できるもの」と「削るべきではないもの」を整理しておきましょう。

節約できるもの

  • “出す必要のない大会”
  • レベル相当でない遠征
  • 目的のない練習
  • 不要な用具アップデート

削ってはいけないもの

  • 身体づくり
  • メディカルサポート
  • 良質なコーチング
  • 心のケア

ここを間違えると、お金だけを燃やし、時間だけが過ぎ、心だけが消耗する。
そんなジュニアを、何人も見てきました。

家族として決めてほしい、“お金のルール”

ここまで費用の現実について触れてきましたが、最後に、「数字の話」よりも大切な“家族の軸”の話をしたいと思います。

ジュニアテニスは、子どもだけの挑戦ではありません。
家族の人生、家族の時間、家族の経済、そのすべてが深く関わります。

そのために、ぜひ家族で決めてほしい指針があります。

① 「年間の上限」を決める

ジュニアテニスで一番怖いのは、「気づいたら追い込まれていた」という状況です。

毎月の支払いは何となく回る。
でも、年間で見たら想像以上の負担になっていた――

そんな家庭を、私たちは何度も見てきました。

大切なのは、

“今年はここまで”
“ここを越えない”

という 明確なラインを、家族として決めることです。

これは「夢にブレーキをかけること」ではありません。
むしろ逆です。

破綻しないから、続けられる。
続けられるから、夢は折れない。

競技人生は、「今だけ」の勝負ではありません。
長く続けるための設計が、結果的に最短距離になることがある――それが現実です。

② 親だけで抱え込まない

多くの親御さんは、こう言います。

「子どもの夢だから、私たちが何とかしないと」

もちろん、その愛情も覚悟も尊いものです。
でも同時に、こうも伝えたい。

親だって、一人の人間です。
限界があります。
疲れます。
不安になります。

それは、弱さではありません。
むしろ“真っ当に向き合っている証拠”です。

だからこそ、一人で背負い続ける必要はありません。

■相談できる相手
・学校
・コーチ
・仲間
・地域
・社会
・そして支援の仕組み

頼っていい。相談していい。支えてもらっていい。
親だけが戦う物語ではないのです。

③ 子どもとも共有する

お金の話は、
「子どもには聞かせたくない話」
「親だけで処理すべきもの」

そう考える家庭も少なくありません。

しかし、ジュニアアスリートの多くは、“まだ子どもでありながら、本気で夢を背負っている存在”です。

だから、伝えてもいいのです。

■子どもに伝えていいお金のこと
・どれだけの時間を使っているか
・どれだけのお金が動いているか
・どれだけの覚悟で家族が支えているか

それは プレッシャーではありません。

むしろ、

「自分は支えられている」
「だからこそ、本気でやろう」

という 責任感と誇り を育てます。

“お金の現実を知ること”は、夢を“現実の重みを持った夢”にする行為なのです。

④ 「支援される」という未来も視野に入れる

ジュニアテニスの世界には、

・全面的な遠征サポート
・一部助成をしてくれる財団
・メーカー契約やサポート
・地域スポンサー
・クラウドファンディング

など、“才能や努力を社会全体で支える仕組み”が、確かに存在しています。

支援されるということは、恥ずかしいことではありません。

むしろ、「この子の挑戦は、社会にとって支える価値がある」と誰かが認めてくれるということ

それは “家族の夢”が、“社会の夢”に広がる瞬間です。
この世界には、“応援するために存在している人たち”も確かにいるのです。

ただ、お金の話をしたいわけじゃない。

この話は、単に「節約しよう」でも、「頑張って稼ごう」でもありません。

これは、家族が無理なく、それでも本気で、夢と現実の間で誠実に立ち続けるための話。

ジュニアテニスのお金の問題は、“スポーツの話”を超えて、“生き方の話”です。

だからこそ、
無理をしすぎないために。
後悔しないために。
そして、いつか振り返ったときに、

「あの時間は、本当にかけがえのない時間だった」

そう思えるために。

家族として“お金のルール”を持つこと。

それは、夢を制限するためではなく、夢を守り抜くための知恵だと、私は思っています。

このコラムがあなたの家庭と、あなたのお子さんの未来にとって、少しでも意味のある指針になれば――それが何よりの願いです。

さて、次回はお金を支援してくれる社会の仕組みについてお伝えしようと思います。

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