ITFとTennis Canadaが示す「10年のジュニア育成ロードマップ」

Long-Term Athlete Development
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10年かけて“学び続ける力”を育てる、それが世界標準のジュニア育成。

「うちの子、今どの段階にいるの?」
「この練習量で足りるの?」

ジュニアテニスに関わる親の多くが抱える疑問に、明確な“道しるべ”を示す取り組みがあります。

それが、ITF(国際テニス連盟)Tennis Canada(カナダテニス協会)が共同で提唱する「10年の育成ロードマップ(Long-Term Athlete Development/LTADモデル)」です。

目次

なぜ「10年計画」が必要なのか

ITFの調査によると、15歳までにテニスをやめてしまうジュニアは全体の過半数にのぼるといいます。

その多くは、才能不足ではなく「期待と現実のギャップ」による燃え尽き。
だからこそ、“10年先を見据えて成長を設計する”という発想が重要になります。

このモデルでは、身体的・技術的な成長だけでなく、心理的な成熟や学業との両立までも含めてロードマップ化されています。

いわば、子どもが安心して努力を続けられる“ナビゲーション”のようなものです。

5つのステージで育てる——年齢ごとの目標

LTADモデルでは、8歳から20歳までを5つの発達ステージに分け、明確な目標を設定しています。

年齢段階主な目的
8〜10歳エンゲージメント(楽しむ基礎期)遊びの中でテニスを好きになる。運動能力・バランス感覚を育てる。
11〜13歳スキル定着期サーブやリターンの基礎を安定させ、戦術を学び始める。
14〜16歳アカデミー期(実践移行期)試合中心の環境で、自分のプレーを戦略的に磨く。
17〜19歳大学・プロ移行期将来の進路(大学orプロ)を見据えて、試合経験と自己管理力を強化。
20歳以降キャリア定着期スケジュール管理・メンタルケアを重視し、持続可能な競技生活へ。

特に注目されるのは「早期専門化を避ける」点です。

8〜10歳では、他のスポーツ経験も推奨されており、楽しみながら身体の使い方を学ぶことが将来の怪我予防や集中力維持につながるとしています(引用元:ITF Player Development Report, 2024)。

アカデミー選びと進路——焦らず、タイミングを見極める

14〜16歳ごろになると、アカデミーや専門的な環境に移行する選手が増えます。
しかし、ITFは「早すぎる専門化」には注意を呼びかけています。

選ぶ際は以下のような観点が重要です。

◎練習環境を選ぶポイント
・コーチの質(ITF/PTR資格や個別成長プランの有無)
・トレーニングと休養のバランス(過負荷にならない構成)
学業との両立サポート(オンライン学習や柔軟なカリキュラム)

また、17〜19歳の段階では、進路選択が現実的な課題に。

大学テニスでは奨学金制度が整備されており、年間5〜10万ドルのプロ遠征費を補える手段として注目されています(引用元:ITF Coaching & Sport Science Review, No.84, 2024)。

親ができるサポート——「支える」から「信じる」へ

この10年モデルの中で、保護者に求められるのは“教える”ことではなく“支える”ことです。

  • 8〜10歳:結果ではなく、楽しむ姿を見守る。
  • 11〜13歳:勝敗ではなく、気づきを共有する。
  • 14〜16歳:進路を「一緒に考える」。
  • 17歳以降:子どもの判断を「信じて託す」。

ITFは、親の一貫した応援と対話が子どものモチベーションを高めると報告しています。

「完璧な親」でなくていい——揺れながらも支え続ける姿が、最も大きな力になります。「強さ」は、ゆっくりと形になる

たとえばスペインやカナダのトップジュニア育成では、14歳前後でようやく「競技中心」の環境に移行します。
焦ってアカデミーに入るよりも、成長のタイミングを見極めることが大切です。

この考え方は、近年のプロ選手の育ち方にも反映されています。
カルロス・アルカラス(スペイン)は13歳まで地元クラブでのびのび練習し、ココ・ガウフ(米国)も複数のスポーツを経験してから専門化しました。
どちらも、早すぎない挑戦が成功を支えています。

10年を見据えれば、焦りは消える

テニスの上達は「速さ」ではなく「継続」で決まります。
このITF・Tennis Canadaのロードマップは、親と子が同じ方向を見て歩むための“地図”です。
目先の勝敗に一喜一憂せず、「10年かけて育つ力」を信じていきましょう。

引用元

  • ITF Coaching & Sport Science Review, No.84 (2024)
  • Tennis Canada LTAD Model for Tennis (2024)
  • TennisDex, “The Complete 10-Year Pathway for Junior Tennis Players” (2025年10月22日公開)
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tennisphere
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