日常の食事が、テニスの強さをつくる。成長期アスリートの「土台ごはん」【テニス選手向けの実践栄養ガイドライン2025①】

朝ご飯を美味しそうに食べる子どもたち
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毎日の一皿が、未来のプレーを変えていきます。

このシリーズでは、ITF・WTA・ATPの3団体が合同で発表した「テニス選手向けの実践栄養ガイドライン」 を元に、ジュニア選手に役立つ栄養のポイントを紹介しています。

第1回のテーマは「日常の食事」、“強いプレーは、日常の食事から生まれる”です。

テニスは長時間のラリー、急な予定変更、試合の連戦など、体への負担がとても大きいスポーツ。成長期ならなおさら、エネルギーも栄養素も、大人以上に必要になります。

今日は、そんな「毎日のごはん」がどれほど重要なのか、じっくり紐解いていきます。

目次

テニスは「エネルギーの予測が難しい」スポーツ

ITF・WTA・ATPのガイドラインでは、テニスの特徴を“高強度・長時間・予定が読めない”スポーツだと説明しています。

まさにジュニアの試合は、何時間になるかは読めず、急に連戦になったり、練習量も日によって大きく変動します。

そして成長期の選手は、

・身体が伸びる(成長)
・練習で消耗する(運動)

この二つを同時にこなすため、常にエネルギー不足になりやすい状態です。

もしエネルギーが足りなければ、

・集中力が続かない
・試合の後半で急に動けなくなる
・疲労骨折などの怪我が増える
・女子選手は月経の乱れが生じやすい

という影響が出やすくなります。

つまり、食事は“栄養”である前に、「怪我や不調を防ぐための毎日の準備」なのです。

炭水化物・たんぱく質・脂質。3つの栄養素を「物語」として理解する

食事指導というと「〇g食べましょう」といった話になりがちですが、ガイドラインを読み解くと、もっと感覚的に理解すると良いことがわかります。

炭水化物は、テニスの物語を動かす“燃料”

テニスはダッシュ、ストップ、方向転換、集中力の維持…

そのどれもが炭水化物(ごはん・パン・麺)に支えられています。
試合時間が長くなるほど必要量は増え、ジュニア選手は特に枯渇しやすいと言われます。

「ごはん少なめ」は、大会後半での失速にもつながりやすいのです。

たんぱく質は、身体をつくり直す“修理班”

練習のたびに、選手の身体は小さなダメージを受けています。

その修復を担当してくれるのがたんぱく質です。

筋肉だけでなく、骨、血液、免疫、ホルモンにも関わるため、夜のたんぱく質は、翌日の元気のための投資だと考えてよいでしょう。

脂質は、プレーを支える“長距離ドライバー”

動き続けるための持久的なエネルギーとして働くのが脂質

「脂は悪いもの」という誤解から極端に避ける選手もいますが、成長期は特に、脂質の不足がホルモンバランスの乱れにつながります。

良質な脂(オリーブオイル、ナッツ、魚など)を“適量”取り入れていくことが大切です。

食事を「整える」ことは、練習メニューを設計するのと同じ

ガイドラインでは、日常の食事を「基礎練習」と表現しても良いほど、重要視しています。

では、家庭でどのように“整える”ことができるのでしょうか。

朝食|1日のスイッチを入れる「スタート食」

朝は、からだのエンジンを温める“点火の時間”です。

眠気まなこで椅子に座るジュニアの前に、主食(ごはん・パン)+たんぱく質(卵や乳製品)+果物+水分がそっと並んでいるだけで、その日の集中力とスタミナは大きく変わります。

「朝は食べないほうが軽い」という言葉は、エネルギー不足がもたらす“偽りの軽さ”であることが多く、ガイドラインでも朝食の重要性が繰り返し強調されています。

昼食|午後の練習を支える「再チャージ食」

昼は、午前の消耗を回復しながら午後の練習へ向かう“大事な橋渡し”。
特にテニスは午後に強度の高い練習が入ることが多く、ここでの食事が後半の動きに直結します。

ごはんやパスタなどの主食をしっかりとり、肉・魚・卵などのたんぱく質、そして彩りのある野菜を添えることで、エネルギータンクがふたたび満たされていきます。

夕食|身体をつくり直す「リセット食」

夜は、成長ホルモンがもっとも活発に働く時間。
つまり“体をつくり直すゴールデンタイム”です。

練習で受けた細かなダメージを修復し、明日のコンディションを整えるために、

  • 主食でエネルギーを補い
  • 肉・魚・大豆でたんぱく質をしっかり
  • 野菜・海藻でビタミン・ミネラルを補給する

そんな“落ち着いた食卓”が、翌日のプレーを静かに支えてくれます。

回復食|練習後30分の「小さな勝負どころ」

そして、ガイドラインで特に強調されているのが、練習や試合後30分以内の回復食(リカバリーフード) です。

炭水化物は、このタイミングで最も吸収されやすく、疲労回復を一気に進めてくれます。
むずかしく考える必要はありません。

  • おにぎり
  • バナナ
  • ヨーグルト
  • 牛乳
  • カカオ多めのチョコ

など、ジュニアでもすぐ手に取れる“続けやすいもの”が最適です。

短い時間の小さな選択が、翌日の体の軽さを大きく変えます。

エネルギー不足を防ぐ、家庭で使える3つの知恵

文章の流れに合わせて、ここでは“心がけ”として紹介します。

1|主食は「減らす」のではなく「守る」

体重を気にするジュニアほど主食を減らしがちですが、テニスの特性を考えると、これは大きなマイナスです。
プレーの質を保つためにも、ごはん・パン・麺をしっかり食べる習慣を。

2|“おやつ=第二の食事”という考え方

間食は息抜きだけではなく、立派なエネルギー補給のタイミング。
試合と試合の合間、練習前後など、テニス特有のスケジュールにとても役立ちます。

3|飲み物でエネルギーをとる工夫

忙しい日、時間がない日、食欲が落ちる日…。
そんなときは、牛乳や100%ジュース、スムージーなど“飲む栄養”を活用すると、自然にエネルギーが補えます。

ごはんは「愛情」でもあり、「戦略」でもある

成長期のテニス選手は、身体を育てながら競技力も育てるという、特別な時期を過ごしています。そのどちらも支えてくれるのが、ふだんの食事。

特別なサプリよりも、特別なメニューよりも、
まずは「主食をしっかり」「たんぱく質をこまめに」「練習後30分の回復」
という、シンプルだけれど確実な土台が選手を強くします。

毎日の一皿が、未来のプレーにつながっています。

次回は、試合で力を出し切るための「試合前・試合中・試合後の食事」について、ガイドラインの内容をもとに、実践しやすい形でお届けします。

引用元

ITF/WTA/ATP Expert Group Statement on Nutrition in High-Performance Tennis(2025)/International Journal of Sport Nutrition and Exercise Metabolism

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