ジュニア選手の“成長”は年齢でなく、「生物学的年齢」で考えよう!【Mirwald式PHV測定ツール付き】

ラケット持ってコートに立つ可愛い男子ジュニアテニスプレーヤー
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数字の年齢より、体がどれだけ“育って”いるかが鍵です。

「うちの子は○歳だから、そろそろ筋トレを…」「同じ年なのに体格が全然違う」――そんな思いを感じたことはありませんか?

同じ年齢でも、子どもの体の成長スピードには驚くほどの個人差があります。

今回は、ジュニアテニス選手の育成に欠かせない「生物学的年齢(身体の成熟度)」という視点から、成長を見つめ直してみましょう。

目次

「年齢(暦年齢)」と「生物学的年齢」は違う

暦年齢とは、誕生日からの経過年数。いわば“カレンダー上の年齢”です。
一方、生物学的年齢とは、骨や筋肉、ホルモンの発達など「身体がどのくらい成熟しているか」を示す指標です。

たとえば同じ12歳でも、ある子は急に背が伸びて声変わりが始まり、別の子はまだ体つきが幼いことがあります。これは、生物学的年齢が異なるからです。

特に思春期前後には、身長が最も速く伸びる「成長スパート(PHV=Peak Height Velocity)」が訪れます。この時期の進行スピードや開始時期は人それぞれで、運動能力やケガのリスク、練習への適応力に大きく影響します(Lloyd et al., 2014/J Strength Cond Res)。

なぜ「生物学的年齢」を意識することが大切なのか

「生物学的年齢」を意識すべき理由を、3つの要点で説明します。

① トレーニング効果と安全性

同じ年齢でも、生物学的に成熟が進んでいる選手の方がスピードや筋力に優れることが報告されています(Čoh et al., 2022/PMC 10123721)。

逆に、成熟が遅い選手が無理な負荷をかけると、関節や骨に過度なストレスがかかり、ケガのリスクが高まります。

② 選抜・育成の公平性

サッカーなどのジュニア競技では、早生まれや早熟な選手が有利になりやすい「相対的年齢効果(RAE)」が知られています(Oliveira et al., 2024)。

テニスでも同様に、「体が大きい・動きが速い」という早熟傾向の選手が注目されがちです。だからこそ、暦年齢だけでなく生物学的成熟度を見てあげることが、公平で長期的な育成につながります。

③ 成長期の負荷管理

骨や筋肉が発達途中の時期に過度なトレーニングを行うと、成長板へのダメージやオーバーユース障害を招くことがあります。

「今この子の体がどんな段階にあるのか」を把握することは、安全な練習設計の第一歩です。

家庭やチームでもできる「生物学的年齢の簡単な調べ方」

方法①|成長曲線に記録する

文部科学省の「子どもの成長曲線」に、数か月ごとの身長をプロットしてみましょう。

  • 緩やかな伸び:成長スパート前
  • 急激な伸び:成長スパート期(PHV付近)
  • 伸びが止まりつつある:成熟期

グラフの傾きを見るだけでも、成長段階をおおまかに把握できます。

方法②|Mirwaldの「成長スパート予測式(PHV推定式)」を使う

カナダの研究者Mirwaldら(2002)は、身長・体重・座高・脚長などから成長スパートまでの残り時間を予測する数式を提案しました。世界中の育成現場で使われています。

🔹男子用の推定式
Maturity Offset(年)=−9.236+0.0002708×(脚長×座高)−0.001663×(年齢×脚長)+0.007216×(年齢×座高)+0.02292×(体重/身長比)

🔹女子用の推定式
Maturity Offset(年)=−9.376+0.0001882×(脚長×座高)+0.0022×(年齢×脚長)+0.005841×(年齢×座高)−0.002658×(年齢×体重)

計算できるツールを作ったので、活用してみてください。

PHV推定(Mirwald式)ミニ計算ツール

PHV(成長スパート)推定ツール

結果の読み方

この「Maturity Offset」の値は、成長スパート(PHV)までの年数を表します。

  • −1.0 年 → 「成長スパートまであと約1年」
  • 0 年 → 「まさに成長スパート期」
  • +1.0 年 → 「成長スパートを過ぎた成熟期」

たとえば −0.5 年であれば、「あと半年ほどで成長スパートに入る」と推定できます。
現場では、選手がどの段階にいるかを把握するための“指標”として活用されています。

方法③|無料ツールを使う

PHV calculator for youth athletes」などの無料サイトでは、数値を入力するだけで自動的に成熟度を推定してくれます。

ただし、これはあくまで目安です。結果に一喜一憂するよりも、「今は成長期だから負荷を控えよう」「体が変化してきたから動きを見直そう」といった判断材料として使うのが理想です。

成長段階に合わせたサポートのポイント

トレーニングを“今の体”に合わせる
 成長スパート前は動作の基礎づくり、スパート期はバランスや柔軟性の維持を意識。

休息も練習の一部
成長期は疲労や痛みが出やすい時期。「頑張りすぎない勇気」も大切です。

焦らず“その子のペース”で
早熟・晩熟の違いは個性です。遅れて見える成長も、長い目で見れば力に変わります。

まとめ

暦年齢だけでは見えない「成長の個性」を理解することが、ジュニアテニス育成の第一歩です。

生物学的年齢という視点を取り入れることで、トレーニングの質、安全性、そして子ども自身の自己理解が大きく変わります。

数字ではなく“今の身体の声”に耳を傾けながら、長い成長の旅を一緒に歩んでいきましょう。

引用元

  • Lloyd, R.S., Oliver, J.L., Faigenbaum, A.D., Myer, G.D., De Ste Croix, M.B.A. (2014). Chronological age vs. biological maturation: Implications for exercise programming in youth. J Strength Cond Res 28(5):1454-1464.
  • Čoh, M. et al. (2022). The effects of biological age on speed-explosive properties in youth tennis players. PMC 10123721.
  • Oliveira, R.S. et al. (2024). Chronological age, relative age, pubertal development, and their effects on performance. Heliyon 10(3).
  • Mirwald, R.L., Baxter-Jones, A.D.G., Bailey, D.A., Beunen, G.P. (2002). An assessment of maturity from anthropometric measurements. Med Sci Sports Exerc, 34(4), 689–694.
  • Science for Sport. Chronological, Biological and Technical Age. scienceforsport.com
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