暑さ・移動・サプリメント…「環境」がジュニア選手の栄養を左右する【テニス選手向けの実践栄養ガイドライン2025③】

水分補給する女性アスリート
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環境に負けない準備が、選手の“当たり前の強さ”をつくる。

本シリーズは、ITF・WTA・ATPの3団体が合同で発表した「テニス選手向けの実践栄養ガイドライン」から紹介しています。

最終回となる今回は、意外と見落とされがちな「環境」と「体調管理」の栄養ポイントに注目します。

暑さ、移動、サプリメント…。これらはジュニア選手の日々のコンディションに直結します。

目次

暑さに強い体を作る“暑熱順化”という準備

競技テニスでは、真夏の試合や照り返しの強いハードコートなど、身体に大きな負担がかかる環境が少なくありません。

ガイドラインでは、暑さに強くなるための「暑熱順化」が重要と述べています(引用元:Expert Group Topic 7/IJSNEM, 2025)。

暑熱順化とは、数日〜2週間ほど「暑い環境」で軽〜中強度の練習を行い、汗のかき方や体温調整がスムーズになるよう身体をならす取り組みです。

■家庭でできる「暑熱順化」ポイント
①試合の1〜2週間前から、昼の時間帯に短めの練習を入れる
②練習直後は塩分を含む飲料での水分・電解質補給を必ずする
③帽子・冷タオル・影での休憩など「冷やす習慣」をセットで行う

暑熱順化ができていると、試合中の集中力や回復力が大きく変わります。

ジュニアにも必要な“旅の食習慣”を整える

遠征先では、食べ慣れない食事・時差・移動疲れなど、栄養管理が崩れやすくなります。

ガイドラインでも、「移動による疲労(トラベル・ファティーグ)」が選手のコンディションを低下させる大きな要因とされています(引用元:Expert Group Topic 7/IJSNEM, 2025)。

移動による疲労を回避するポイント
①水筒を持参し「こまめな水分補給」を意識
②機内・車内では、消化に良い軽食(おにぎり、フルーツ、ヨーグルトなど)を
③現地に着いたら、まず朝食の確保(ホテルの内容を確認、近くのスーパーをチェック)

栄養を守ることは、遠征の“土台を作ること”。大人が整えてあげることで、選手は安心してプレーに集中できます。

サプリメントは“特別なケースのみ”。基本は「食事が主役」

ガイドラインは強調しています。

「サプリメントは必要な場合に限り、慎重に」(引用元:Expert Group Topic 6/IJSNEM, 2025)。

特にジュニア選手では、安全性や長期的な影響が立証されていないものも多く、基本的にはおすすめされません

実際、ガイドラインでは18歳未満の選手に対して、クレアチンは推奨されていないと明記されています(引用元:IJSNEM, 2025)。

サプリよりも、

  • 主食(エネルギー源)
  • 主菜(たんぱく質)
  • 副菜(ビタミン・ミネラル)
  • 水分・電解質の補給

これら“当たり前の食事”が最も大切です。

体調を守る食事が、怪我や病気の「予防」にもなる

ガイドラインには、栄養が

  • 免疫力の維持
  • 怪我からの回復
  • 連戦で落ちやすい体力の維持

に深く関わっていることが強調されています(引用元:Topic 8/IJSNEM, 2025)。

ジュニアで特に意識したい食習慣
①1日3食+練習量に応じた補食
②魚・肉・卵・大豆などのたんぱく質を毎食しっかり
③色の濃い野菜や果物でビタミン補給
④睡眠前の軽い補食(牛乳×バナナなど)で回復をサポート

“日々の積み重ね”こそが、安心して練習できる身体をつくります。

「環境×栄養」の準備が、試合での土台をつくる

暑さ、移動、サプリメント、体調管理…。これらは一見バラバラに見えますが、どれも選手のコンディションを支える大切な柱です。

急に特別なことをするのではなく、「食事・水分・休息」の当たり前を、環境に合わせて整えること。これが、ジュニア選手が安心して力を発揮するための何よりの準備になります。

3回にわたってお届けしてきた「テニス選手向け 実践栄養ガイドライン」。

日常のごはん、試合の日の戦略、環境への準備――どれも特別ではありませんが、選手の未来を静かに支える大きな力になります。

栄養は、目に見える技術とは違い、努力がすぐ結果に現れないこともあります。けれど、毎日の小さな積み重ねは、気づかないうちに“疲れにくい身体”“折れない集中力”“怪我をしにくい土台”となって、選手を支え続けます。

どうか焦らず、がんばりすぎず、
できることを、できる範囲で。

それでも十分に、子どもたちは強くなっていきます。

このシリーズが、選手を支える大人の皆さまの小さな道しるべになれば幸いです。

引用元

International Journal of Sport Nutrition and Exercise Metabolism (IJSNEM), 2025/Expert Group Statement on Nutrition in High-Performance Tennis(ITF・WTA・ATP)

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tennisphere
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