「熱中症を予防し、選手の安全を守るための大切なルールです」
2026年シーズンから、男子プロテニスツアーを統括するATPで、新たな「ヒートポリシー(暑熱時の試合運営ルール)」が正式に導入されることが決まりました。
これは、猛暑の中でも選手の安全を最優先に試合を行うための明確な基準を定めたものです。
この動きを受けて、改めて日本の大会やジュニアテニスにも関わる「ヒートルール」について、基本から分かりやすく整理してみましょう。
ヒートルールとは何か?
■ヒートルールの目的
ヒートルールは、暑さ・高温・湿度が厳しい環境でテニスを行う際に、選手の熱中症・健康リスクを下げることを目的にした運用ルールです。
暑熱環境では、身体への負担が大きくなり、熱中症や体力低下による事故につながる可能性があります。
そのため、主催者や大会側が暑さ指数(WBGT)を基準に対応策を講じることが期待されているのが、ヒートルールの基本です。
暑さの指標:WBGT(湿球黒球温度)って?
ヒートルールでは、単純な気温だけでなく、WBGT(Wet Bulb Globe Temperature:湿球黒球温度)という指標を使います。
WBGTは
- 気温
- 湿度
- 日射(太陽の熱)
- 風
これらを総合して“体にかかる熱ストレス”を評価する指標です。
単に「30℃」という気温だけではなく、体感や危険度を科学的に評価するために使われています。
JTAもWBGTを参考にして対応基準を定めています。
日本の大会でのヒートルール(JTA)
日本テニス協会(JTA)の公式資料によると、ヒートルールは以下のように運用されています(大会規模やカテゴリーにより若干の違いあり)。
暑さ指数(WBGT)に応じて対応が変わる
| WBGT値(暑さ指数) | 危険度の目安 | 主な対応内容 |
|---|---|---|
| 24〜28 | 注意 | ・こまめな水分補給を促す ・無理をしないよう声かけ |
| 28〜31 | 警戒 | ・積極的に休憩を取る ・水分・電解質補給を強化 |
| 31〜35 | 厳重警戒 | ・頻繁な休憩を入れる ・氷・冷却タオルなどで体を冷やす |
| 35以上 | 特別対応 | ・10分間の休憩(ヒートブレイク)を検討 ・試合方式の変更や中断を判断 |
実際の対応例
- 3セットマッチでの最終セット前に10分間の休憩を導入
- 選手のコンディションに応じて試合フォーマット変更(ショートセットなど)
「無理な試合続行は重大事故につながる」と明記されていて、大会主催者が責任を持って暑熱下の運営をすることが求められているという考え方です。
プロの世界でも動きが加速:ATPの新ヒートポリシー(2026年度〜)
2025年12月、ATP(男子プロツアー)が2026年シーズンから新たな「ヒート・ルール(ヒートポリシー)」を導入すると発表しました。
ATPの新ヒートポリシーのポイント
WBGTが30.1℃以上になった場合
→第2セット終了後に10分間の冷却休憩(Cooling Break)を申請可能(両選手が対象)
冷却休憩中は
→水分補給、着替え、冷却、シャワー、コーチングなどOK
WBGTが32.2℃を超える場合
→試合を一時中断(安全重視)
この新ルールは、これまで主催者や現場裁量だった判断を数値基準で明確化したものです。選手の安全確保に大きく寄与すると期待されています。
また、このルールはWTA(女子ツアー)やグランドスラム大会で既に同様の制度があるものに揃える形でもあり、国際的な流れとも整合します。
どうして今ヒートルールが重要なの?
地球温暖化や大会日程の過密化などにより、高温・猛暑環境でのプレー機会が増えています。
特にジュニアや育成年代は体力面や体温調整能力が未発達で、熱中症リスクが高まります。
ヒートルールは単なる「ルール変更」ではなく、子どもたちの安全と生涯スポーツとしての楽しさを守るための大切な仕組みです。
保護者・指導者としても
- 暑さ指数を知る
- こまめな水分補給・準備
- 暑さに応じた休息を取る
といった意識が、実際のプレー場面で役立ちます。
ヒートルールは「守るため」のルール
ヒートルールは、
熱中症予防
選手の安全確保
持続可能なプレー環境
という3つの大きな目的を持っています。
日本大会でもプロツアーでも、ルールの運用は「暑さ指数(WBGT)」を基準にされており、科学的指標に基づいた対応で選手の健康を守ることが本質です。
今後はジュニアの試合でも、現場でルールを理解し適用することが一層大切になっていきます。
出典
https://www.jta-tennis.or.jp/Portals/0/resources/information/integrity/pdf/jta-010-j.pdf

