第6章|セルフジャッジを理解しよう― 自分で決める力が、テニスの本当の強さ ―

インボール テニス
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「正しい判定」より、「誠実な判断」を。

ジュニアテニスでは、ほとんどの試合がセルフジャッジ(自己判定)で行われます。

つまり、審判はいません。

自分で「イン」か「アウト」かを判断し、自分で相手に伝える。

それは単なるルールではなく、テニスというスポーツが育てたい“心の力”なのです。

目次

セルフジャッジとは?

セルフジャッジとは、試合中に選手自身がライン際のボールを判断し、「アウト」「イン」を宣言する仕組みです。

国際テニス連盟(ITF)のジュニア規定でも、

“セルフジャッジはジュニア育成の基本であり、選手に誠実さと責任感を教える教育的システムである。”
(引用元:ITF, 2023/Junior Fair Play Guidelines)

つまりセルフジャッジは、「正確な目を持つこと」よりも、“自分で決めて責任を持つこと”を学ぶための制度なのです。

基本ルールを知っておこう

セルフジャッジには、いくつかの基本ルールがあります。
難しく見えますが、覚えるのはたったこれだけ。

項目内容
1. 自分のコートに入ったボールは自分が判断する相手のボールを「イン」「アウト」と判定するのは自分。相手コートのボールは相手が判断します。
2. 迷ったときは“イン”にする少しでも迷ったら「イン」。自分に有利に取らないことがフェアプレーの基本です。
3. 声に出して宣言する「アウト!」「イン!」と、相手に聞こえるように伝えます。
4. 相手を尊重する相手の判定に不満があっても、感情的にならず「確認してもいい?」と冷静に伝える。
5. トラブルのときは主催者・レフェリーへコーチや親がコートに入るのはNG。判断はすべて審判員・大会スタッフに任せます。

ポイント
“正しく判定すること”より、“誠実に判定しようとする姿勢”が何より大切。

セルフジャッジで育つ3つの力

セルフジャッジは、ただのルールではなく、子どもの成長を支える仕組みです。

① 責任感

自分の言葉で「アウト」と言うことは、“自分の判断に責任を持つ”ということ。
勝っても負けても、「自分で決めた」経験が次の自信になります。

② 誠実さ(スポーツマンシップ)

間違っても、「ごめんね、今の近かったね」と言えること。
それは勝敗以上に価値のある“人としての成長”です。

③ 冷静さ・対話力

判定の違いが起きたときも、「確認していい?」と落ち着いて伝える練習になります。
この“言葉の選び方”が、将来のコミュニケーション力にもつながります。

親ができるサポートは「信じて見守る」

セルフジャッジの場面で、親が一番やってはいけないのは介入することです。

試合中に「今のはアウトだよ!」と口を出すのは、ルール違反であるだけでなく、子どもの“判断する力”を奪ってしまいます。

親の役割は“見守ること”
子どもが悩んでいるときも、まずは最後まで任せる。
試合後に「どう感じた?」「どんな判断が難しかった?」と対話する。
「きみの判断を信じているよ」と伝える。

この経験の積み重ねが、人としての自立を育てます。

トラブルがあったときの考え方

もし、相手の判定に納得できない場面があっても、その試合全体を“悪い思い出”にする必要はありません。

「あの子ズルい!」ではなく、「自分はどうしたかった?」と問い直すことで、子どもは“自分軸で考える力”を身につけていきます。

試合は勝ち負けの場であると同時に、「信頼」や「誠実さ」を学ぶ教室でもあります。

まとめ

セルフジャッジとは、審判のいない世界で“自分を審判にする”こと。

それは、勝つこと以上に価値のある経験です。

親ができる最高のサポートは、「判断を任せ、信じること」。

その信頼が、コートの上で子どもを一番強くします。

引用元

  • ITF (2023). Junior Fair Play Guidelines.
  • ITF (2024). Ethical Behavior in Junior Tennis.
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tennisphere
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