見守るとは、「何もしない」ことではなく、「信じて待つ」こと。
ジュニアテニスを続けていると、「もう少し頑張れば勝てるのに」「なんで集中しないの?」と親の心が揺れる瞬間がたくさんあります。
でも、子どもが本当に成長するのは、“信じて任せてもらえたとき” 。
第8回では、親が身につけたい「見守る力」について、心理学とテニス教育の視点から解説します。
“見守る力”とは何か
見守る力とは、「手を出さずに、心を寄せる力」です。
コーチが指導し、子どもが学ぶ時間に、親が「信頼して待つ」ことができるかどうかが、成長の分かれ道になります。
米スタンフォード大学の心理学者キャロル・ドゥエックは、
“子どもは、親が『失敗しても大丈夫』と思っているときに、最も挑戦的になれる”
(Dweck, 2006/Mindset)。
と述べています
つまり、見守ることは「放任」ではなく、“挑戦を支える環境づくり”なのです。
つい“口を出したくなる瞬間”の心理
親が介入したくなるのは、子どもを愛しているから。
その裏には、「失敗してほしくない」「傷つけたくない」という優しさがあります。
でも、成長のプロセスには“失敗”が欠かせません。
ジュニア期の選手を対象とした調査では、
“親がプレー内容に細かく口を出すほど、子どもの自己決定感が低くなる傾向”
(引用元:ITF, 2023/Parenting and Autonomy in Junior Sport)
という結果が出ています。
口を出したくなったら、深呼吸してこう考えましょう。
「この子はいま、何を学ぼうとしているのだろう?」
それだけで、見守る姿勢に切り替えられます。
“待つ”ことが子どもの自信をつくる
テニスは「自分で考えて、動く」スポーツ。
だからこそ、親が先回りして答えを与えてしまうと、子どもが“考える機会”を失ってしまいます。
「ミスしても、考えて立ち上がる力」
それが、テニスが育てる“人間力”です。
親ができる最高のサポートは、
・コートに立つ姿を静かに見守ること。
・試合後に「どう感じた?」と聞いてあげること。
・結果よりも“努力”と“継続”を認めること。
“信じて待つ”ことが、最大の応援になります。
「我慢する親」も、成長している
見守るのは、実はとても難しいことです。
子どもの成長に一喜一憂しながら、親もまた“揺れながら学ぶ存在”。
「今日は我慢できた」
「つい言っちゃったけど、次は聞いてみよう」
その小さな積み重ねこそ、親の成長です。
テニスが子どもを育てるように、子どももまた、親を育ててくれています。
“信頼”というギフトを渡そう
子どもが試合前に不安そうな顔をしていたら、親がしてあげられることはたったひとつ。
「大丈夫。あなたを信じてる。」
この言葉があれば、どんなコーチングよりも強い力になります。
見守るとは、信頼というギフトを渡すこと。
その信頼が、子どもを自立へと導きます。
まとめ
見守る力とは、手を離すことではなく、心を寄せること。
親が“待つ勇気”を持てたとき、子どもは“挑戦する勇気”を手に入れます。
テニスが教えてくれるのは、技術だけでなく、“信じて見守る”という愛の形なのです。
引用元
- Dweck, C. S. (2006). Mindset: The New Psychology of Success.ITF (2023). Parenting and Autonomy in Junior Sport.

