チュニジアのジュニア選手に見る「テニス怪我の実態」—再発を防ぐために必要な“治しきる”という視点

チュニジアのジュニアテニスプレーヤー
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完治前の復帰が、次のケガを生む——データが示す厳しい現実。

テニスは華やかなスポーツに見えますが、成長期の身体には大きな負担がかかります。

今回紹介するのは、北アフリカで初めて本格的に行われた、ジュニア競技者のケガの実態調査。

そこから見えてきたのは、“ケガの多さ”と“治療の不十分さ”という、どの国にも共通する課題でした。

目次

半数以上の子どもがケガを経験

チュニジアの競技ジュニア256名(5〜18歳)を対象にした調査では、53.5%がテニスによるケガを経験していました(Layouni et al., 2025/Medicina)。

合計366件のケガが報告され、年齢が上がるほど発生率が増える傾向が確認されました。

特に多かった部位は以下の通りです

  • 下肢:58.5%(膝23.2%、足首17.5%)
  • 上肢:32.8%(手首10.1%、肩8.5%、肘8.5%)

これは、急な方向転換や繰り返しのスイングといった、テニス特有の動きの影響とされています。

練習中、とくに暑い環境で起こりやすい

ケガの74.9%は練習中に発生。
さらに93.4%が暑熱環境”で起きていました。

チュニジアは夏場に気温35℃を超えることが珍しくなく、蒸し暑い環境で集中力や動きが低下しやすいことが背景にあります。

日本の夏も条件は似ており、他人事ではありません。

見逃せない“ケガの再発率54.6%”

この研究で最も目を引くのは、ケガの半数以上が「再発」あるいは「別部位の二次的なケガ」だったことです。
さらに、リハビリを最後まで終えていない選手は、終えた選手の約1.7倍の頻度で再ケガしていました。

つまり、
「完全に治しきらず復帰 → 体のバランスが崩れ → 別の場所を痛める」
という負の連鎖が起きていると考えられます(※研究は因果ではなく関連を示したもの)。

リハビリの実施率はわずか27.9%

調査では、

  • 医師の診察を受けたのは57.4%
  • 理学療法(フィジオ)を利用したのは3.6%
  • リハビリを実施したのは27.9%

という結果でした。

また、復帰前に「体力テスト」や「段階的復帰」を行ったのは40.7%にとどまりました。

これはチュニジアの医療リソースの問題もありますが、世界のジュニアスポーツ全体に共通する課題とも言えます。

ケガを減らすために必要とされる取り組み

研究チームは、次のような対策が必要だと報告しています:

下肢の安定性を高める“神経筋トレーニング”の導入
・適切なリハビリへのアクセス改善
保護者・指導者へのケガ管理教育
再発を防ぐための、段階的な復帰プロトコルの整備

これらは、どの国のジュニア選手にもそのまま当てはまる現実的な指針です。

まとめ

今回の研究は、地域特有の環境(暑さ、ハードコート中心)を背景としながらも、ジュニアテニスに共通する課題——「ケガの多さ」と「治りきらないままの復帰」——をはっきり示してくれました。

子どもたちが長くテニスを楽しむためには、“治すこと”もトレーニングの一部であるという考え方が欠かせません。

引用元

Layouni, S. et al. (2025). Epidemiology of Tennis-Related Injuries Among Competitive Youth Players in Tunisia: Frequency, Characteristics, and Management Patterns. Medicina, 61(8), 1478. https://doi.org/10.3390/medicina61081478

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