「冬は“頑張る季節”ではなく、“整える季節”でもある。」
冬は大会が少なく、基礎練習や体づくりにじっくり取り組める貴重な季節です。
一方で、寒さや乾燥、日照時間の短さといった環境要因は、ジュニアテニス選手の身体に特有のリスクをもたらすこが、数多くの研究で示されています。
本コラムでは、データや論文に基づき、冬に特に注意すべきポイントを整理します。
冬は「ケガの発生率」が高まる季節である
スポーツ医学の分野では、低温環境下では筋肉や腱の柔軟性が低下することが広く知られています。
筋温が下がると、筋肉や腱は硬くなり、急な動きに対する耐性が落ちます。その状態でダッシュ、急停止、方向転換を繰り返すテニスでは、肉離れや腱障害が起こりやすくなると報告されています。
特にジュニア選手の場合、
- 足首
- 膝
- 腰
- 肩
といった部位に負担が集中しやすく、冬場にケガが増える傾向があることが、ユースアスリートを対象とした研究で示されています。
だから“準備”が最優先
研究で一貫して重要視されているのは、ウォームアップの質と時間です。
- 冬は「体が温まった」と感じるまでに時間がかかる
- 静的ストレッチよりも、軽いランや動的な動きから入る方が有効
- 練習開始=全力ではなく、段階的に強度を上げる
これは精神論ではなく、筋温を上げることでケガの発生率を下げるという、明確なエビデンスに基づいた考え方です。
寒さは「筋出力」と「反応速度」に影響する
運動生理学の研究では、筋温が低下すると筋出力が下がること、そして神経伝達速度が遅くなることが確認されています。
簡単に言えば、「思ったより体が動かない」「反応が一瞬遅れる」状態になりやすいのが冬です。
テニスは、
- 相手の打球への反応
- タイミングの調整
- 瞬時の判断
が連続するスポーツです。
そのため、寒さによるわずかな反応速度の低下が、フォームの乱れや無理な体勢を生み、結果としてケガのリスクを高める可能性があると指摘されています。
屋外コートでは特にこの影響が大きく、同じ練習内容でも夏場とは身体への負荷の質が異なることが、研究から示唆されています。
無理を前提にしない
- 冬はミスが増える前提で練習内容を組み立てる
- フォームが崩れやすい日は、量よりも質を重視する
- 屋外練習では特に、集中力が落ちたら早めに切り上げる判断も重要
「寒い中でも夏と同じようにやる」ことが評価されがちですが、研究的には環境に合わせた負荷調整の方が合理的とされています。
冬は「呼吸器系トラブル」が増えやすい
冷たく乾燥した空気は、気道に刺激を与えやすくなります。
冬場に運動をすると咳が出やすくなる、息が苦しくなるといった症状は、「運動誘発性気管支収縮(EIB)」として知られています。
小児・ユースアスリートを対象とした研究では、
- 冬季
- 屋外
- 高強度運動
という条件が重なると、EIBの発症リスクが高まることが報告されています。
これは喘息の診断がない子どもでも起こり得る現象であり、成長期の呼吸器が影響を受けやすい点が指摘されています。
呼吸が浅くなると、持久力だけでなく集中力にも影響が出るため、冬の体調変化はパフォーマンス全体に関係する要素といえます。
咳や息苦しさを軽視しない
- 冬に咳が続く・息が苦しい場合は「様子見」で終わらせない
- 強度の高い練習が続く日は、体調チェックを丁寧に行う
- 屋内練習と屋外練習を適切に使い分ける
呼吸が乱れると、持久力だけでなく集中力や判断力にも影響するため、体調のサインとして真剣に受け止めることが重要だとされています。
日照時間の減少が「回復」と「メンタル」に関係する
冬は日照時間が短くなります。
この変化は、体内で合成されるビタミンDの量に影響を与えることが知られています。
ビタミンDは、
- 骨の健康
- 筋機能
- 免疫機能
と関係しており、特に成長期の選手にとって重要な栄養素です。
北半球の冬季にビタミンD不足が起こりやすいことは、多くの疫学研究で報告されています。
また、日照時間の減少は、気分や意欲と関連することも示唆されています。
オフシーズンに「なんとなくやる気が出ない」「疲れが抜けにくい」と感じるケースが見られる背景には、環境要因が関与している可能性があるとされています。
見えない疲れに目を向ける
- 冬は「疲れが抜けにくい」前提で生活リズムを見る
- 気分の落ち込みや無気力が続く場合は、休養不足を疑う
- 練習量だけでなく、睡眠と回復の質に目を向ける
冬の不調は「気合が足りない」のではなく、環境要因による可能性があることを、研究は示しています。
冬のトレーニング量は「成長期の身体」に大きく影響する
冬は試合が少ない分、練習量が増えやすい時期です。
一方で、ジュニア期は骨端線(成長軟骨)がまだ閉じておらず、過度な反復動作によるオーバーユース障害が起こりやすい時期でもあります。
研究では、
- トレーニング量の急増
- 単一動作の反復
- 回復不足
が重なると、成長期特有の障害リスクが高まることが示されています。
テニスでは、サーブ動作やストップ&ダッシュなど、特定部位に負担が集中しやすい特徴があるため、冬の積み重ねが春以降の状態に影響する可能性があります。
増やしすぎない勇気
- 冬に「一気に追い込む」発想を持たない
- 同じ動作の反復が続いていないかを確認する
- 違和感や軽い痛みの段階で練習内容を見直す
テニス特有のサーブ動作や急停止動作は、知らず知らずのうちに負荷が蓄積します。
冬は、積み上げる量より、壊さない視点が重要だとされています。
冬は「頑張る」より、「整える」ことが未来をつくる
研究やデータが示しているのは、冬は特別な根性が必要な季節ではなく、特別な配慮が必要な季節だということです。
- ケガのリスク
- 体調の変化
- 見えにくい疲労
これらを理解し、環境に合わせた関わり方をすることが、春以降の成長につながります。
冬をどう過ごすかは、結果がすぐに見えません。
けれど、その積み重ねが、確実に次の季節の伸びを支えていきます。。
引用元
- スポーツ医学・運動生理学関連論文
- 小児・ユースアスリート研究
- American College of Sports Medicine
- International Tennis Federation

