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練習量を増やした「翌週」が危ない!ジュニアテニスの傷害を防ぐ、家庭でできる4つのこと

急激な練習量アップがケガを招く
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「もっと打たせたい」と思う前に、まず“増やし方”を。

「もっと練習すれば強くなる」——その気持ちが、実はケガの引き金になっているかもしれません。

世界の観察研究37件をまとめた最新レビューが示したのは、傷害を招く最大の要因が“練習量の急な増やし方”だという事実でした。

今日から家庭で使えるポイントとして分かりやすく、お届けします!

目次

まず知っておきたい:半数の子が「どこか痛い」

今回参照したのは、2011〜2024年に発表されたハイパフォーマンス選手対象の観察研究37件(うち13〜18歳のジュニアを対象にしたものが16件)を統合した系統的レビューです。スペインの大学とラファ・ナダル・アカデミー所属の研究者らがまとめました。

そこで見えてきたジュニアの実態は、なかなかシビアです。

シーズンを通してみると、およそ46〜54%の選手が何らかの痛みや不調を抱えているという報告があります。ケガの起きやすさは1,000プレー時間あたり2.11〜3.50件。もっとも多いのは下肢(脚まわり)のトラブルで全体の約半分、急なケガでは足首の捻挫が目立ちます。

つまり、テニスに真剣に取り組む子にとって「痛み」は決して珍しいことではありません。だからこそ、“起きてから治す”より“起きにくくする”ほうがずっと大切になります。

最大の落とし穴は「急に増やす」こと

このレビューがもっとも強調しているリスク要因が、短期間での練習量の急増です。専門的には「直近1週間の負荷 ÷ 過去数週間の平均負荷(ACWR)」という指標で測るのですが、この値が1.3を超えたジュニアは、翌週にケガをする確率が約1.6倍に上がっていました。

ポイントは「翌週」という時間差です。試合が近い、調子がいい、長期休みでたっぷり打てる——そんなときに一気に量を増やすと、体への“ツケ”は一拍おいて回ってくる。がんばった直後ではなく、その次の週にケガとして現れやすいのです。

危険信号になりやすい場面
・週の練習量が前の週より30%以上増えた
・年間の試合数が60試合を超えている
・ハードコート→クレーなど、サーフェスが急に変わった直後

見落としやすい「コートが変わった直後」

もうひとつ、レビューが危険因子として挙げているのがプレーするサーフェス(コート面)の急な移行です。ハードコート、クレー、オムニ(砂入り人工芝)、グラス——面が変われば、足の止まり方も滑り方も、体にかかる衝撃の質もまるで違います。同じ動きをしているつもりでも、体は“別の負荷”を受けているのです。

とくに切り替わりの直後は、まだ体がその面に慣れていません。滑るコートで踏ん張ろうとして脚を痛めたり、逆にグリップの効くコートで急停止を繰り返して足首やひざに負担が集中したり——。合宿・遠征・大会でいつもと違うコートに移るときは、それ自体が“負荷の急変”だと考えておくと安全です。

■サーフェスが変わるときのひと工夫
・違う面に入る初日〜数日は、量やスピードを落として体を慣らす
・遠征先のコートが普段と違うと分かったら、事前に同じ面で練習日を1回はさむ
・「滑る/止まる」の感覚が違うぶん、足元(シューズ・足首)のケアをいつも以上に

家庭でできる予防策 4つ

ここからが本題です。レビューでは、実際に効果が数字で示された予防策も紹介されています。専門家でなくても取り入れられるものを、4つに絞りました。

1.練習量は「前の週+15%以内」で増やす

いちばん効果的で、いちばん簡単です。量を増やすときは一気にではなく、1週間あたりの増加を15%以内にとどめる。この“ゆるやかな4週間プラン”で、傷害が21%減ったという結果が出ています。

例:今週10時間なら、来週は11時間台まで。次の週はそこからまた1割強。

試合や合宿の前に「追い込みたい」と思ったときこそ、この15%を思い出してください。増やすなら計画的に、少しずつ。

2.体幹+肩の『予防トレ』に時間を確保する

お腹まわり(体幹)を安定させるトレーニングに、肩のインナーマッスル(回旋筋腱板)をブレーキ方向に鍛えるエキセントリック運動を加えると、使いすぎによるケガ(オーバーユース障害)が26%減少しました。打つ練習だけで時間を埋めず、この“土台づくり”のためのまとまった時間を確保することが効いてきます。

3.グリップサイズを一度、見直す

意外な盲点がラケットのグリップです。手に合ったサイズへ個別に調整するだけで、テニス肘(外側上顆炎)の発生が14%から6%へと、ほぼ半減したという報告があります。子どもは成長で手も大きくなります。「なんとなく前のまま」になっていないか、買い替えやグリップ交換のタイミングで一度チェックしてみてください。

4.肩の“動きの硬さ”に気づく

利き腕の肩は、使い込むうちに内側へひねる動き(内旋)が硬くなりがちです。レビューでは、この内旋の可動域が反対側より15度以上落ちると、肩の障害リスクが約2倍になると示されています。「バンザイや背中で手を組む動作が左右で違う」と感じたら、早めのケアやストレッチのサイン。痛みが出る前の段階で気づけるチェックポイントです。

読むときの注意:このレビューはエビデンスの確実性が「低〜中等度」と評価されています。数字はあくまで“傾向”であり、すべての子に同じように当てはまるわけではありません。痛みが続く・強い場合は自己判断せず、スポーツドクターや理学療法士など専門家に相談してください。ここで紹介した予防策も、お子さんの年齢や体格に合わせて無理のない範囲で取り入れるのが前提です。

指導者・コーチ向けメモ

ACWRを“ざっくり”でも運用する

厳密な計測が難しくても、「直近1週間の負荷が、過去3〜4週の平均より3割増えていないか」を週次で見るだけでリスクの山は避けられます。1.3が一つの目安ライン。

▶ACWRのざっくり計算のやり方
① 負荷の“ものさし”を1つ決める(いちばん簡単なのは週の合計練習時間。慣れてきたら「時間 × 主観的なきつさ10段階(RPE)」にすると精度が上がります)。
② 直近1週間の合計(=急性負荷)を出す。
③ 過去4週間の1週あたり平均(=慢性負荷)を出す。
④ ② ÷ ③ = ACWR。0.8〜1.3に収まっていればまず安全圏、1.3超で要注意
例:過去4週が 8・10・9・11 時間 → 平均 9.5 時間。今週いきなり 14 時間 → 14 ÷ 9.5 ≈ 1.47。1.3を超えているので、この週は増やしすぎのサイン。

負荷の“急変ポイント”をカレンダーで先回り

長期休み明け、大会前の追い込み、サーフェス変更、遠征の連戦——ここで前週比+15%を超えないよう、あらかじめ漸増計画(少しずつ増やす計画)を組む。

▶ フラグを立てておきたいタイミング
長期休み明け(春・夏・冬休み後)…量が落ちた後の再開は要注意。休み前の水準にいきなり戻さない。
大会前の追い込み…「もう一段上げたい」時期こそ+15%ルールを死守。
サーフェス変更・遠征の連戦…それ自体が負荷の急変。移行初日は量とスピードを落とす。
進級・入部・チーム移籍の直後…環境が変わり練習量が跳ね上がりやすい。
先回りのコツ:年間・月間カレンダーにこれらの日を先にマークし、その前後で1週間の負荷を意図的に下げる“調整週(デロード)”を差し込んでおく。増やす週と抜く週をあらかじめ設計しておくと、現場の勢いで増やしすぎるのを防げる。

予防トレを“練習の一部”として時間割に固定する

体幹+回旋筋腱板のエキセントリックを週2時間。自由時間ではなくメニューに組み込むほど継続率が上がります。

▶ 何を・どれくらい入れるか(例)
体幹の安定化…プランク、サイドプランク、デッドバグなど。“固める”動きで、打つときのブレを減らす土台づくり。
回旋筋腱板のエキセントリック…チューブやダンベルでの肩の外旋・内旋を、戻す(ブレーキ)局面をゆっくり効かせて行う。肩のインナーを守る。
組み込み方:週合計2時間を目安に、ウォームアップ/クールダウンへ10〜15分ずつ小分けにすると継続しやすい。「時間が余ったらやる」ではなく最初からメニュー化する。
注意:種目はあくまで一例。年齢・体格・成長段階に応じてフォーム重視で。負荷や回数は専門家(トレーナー・理学療法士)と相談して調整を。

肩の内旋可動域(GIRD)を定点観測

左右差15度以上を早期発見の閾値として、シーズン中に定期チェック。年間60試合超・急な試合数増もフラグに。

▶ 現場でのチェック手順
① 選手を仰向けに寝かせ、測る側の腕を横に90度開き、ひじも90度に曲げる(手が天井を向く形)。
② もう片方の手で肩の前側(肩甲骨の突起)を軽く押さえて肩甲骨を固定。肩が浮いて代償しないようにする。
③ 前腕を足側(お腹の方向)へ倒していき、肩が浮き始める手前までの角度が内旋可動域。
④ 利き腕と反対側を比べ、利き腕が15度以上小さければGIRDのサイン
角度計がなければ:両腕同時に同じ形をつくり、手のひらを足側へ倒したとき片方だけ床に近づかない(浮く・止まる)差を見る。背中で手を組む動作の左右差もセルフチェックに使える。
運用のコツ:シーズン初めに基準値を測り、月1回など同条件で追う。外旋も測って「内旋+外旋の合計」の左右差も見ると、自然な適応かケアが必要な硬さかを見分けやすい。
注意:これは気づきのための目安。左右差が大きい・痛みを伴う場合は無理にストレッチせず、理学療法士やスポーツドクターへ。

用具の個別最適化を軽視しない

グリップサイズの見直しは低コストで効果が大きい介入。成長期の選手は特に定期的に。

▶ グリップサイズの簡単チェック
① イースタングリップで握り、指先とてのひらの間のすき間に、反対の手の人差し指が1本ちょうど入るかを見る。
② すき間が狭くて指が入らない → グリップが小さすぎ。指が余ってブカブカ → 大きすぎ。ほどよく1本入るのが目安。
③ 小さすぎるグリップは握り込みすぎて前腕・ひじに負担がかかりやすい。テニス肘対策として見直す価値が大きい。
運用のコツ:子どもは成長で手が大きくなるので、シーズンごと・買い替え時に再チェック。グリップテープの重ね巻きでも半サイズ程度は微調整できる。
あわせて見たい:ラケットの重さ・長さが体格に合っているか、ガットのテンションが硬すぎないかも、腕への負担に関わる要素。迷ったらショップや専門家に相談を。

ジュニア期のテニスは、続けられてこそ上達します。「量」を敵にするのではなく、増やし方を上手にコントロールすること——それが、次のシーズンも元気にコートに立つための、いちばん現実的な近道です。

参考文献

Risk Factors and Prevention of Musculoskeletal Injuries in Adolescent and Adult High-Performance Tennis Players: A Systematic Review.
Sports (MDPI), 2025年10月1日, 13(10):336.(アルフォンソ10世大学ほか/ラファ・ナダル・アカデミー所属研究者を共著に含む。PROSPERO登録・PRISMA準拠)
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12568103/

本記事は上記研究をわかりやすく紹介するもので、医学的診断・治療を目的としたものではありません。痛みや不調がある場合は医療機関にご相談ください。

急激な練習量アップがケガを招く

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