「ジュニアは“走る”。プロは“速く動く”。」
ジュニアテニスの試合を見ていると、「よく走る選手が強い」と感じることが多いのではないでしょうか。
長いラリーを粘り強く続け、ボールを拾い続ける。そんな選手が勝ち上がる場面を何度も見てきました。
しかし最近のスポーツ科学の研究は、ジュニアとプロではテニスの身体的な特徴がかなり違う可能性を示しています。
もしそれが本当だとしたら、ジュニア期の練習の考え方も少し変わってくるかもしれません。
ジュニアとプロの練習を科学的に測定した研究
スペインの研究チームが、興味深い調査を行いました。
対象となったのは、世界レベルの選手を多く育てているスペインのハイパフォーマンスアカデミーに所属するジュニア選手とプロ選手です。
選手たちは練習中に、GPSや加速度センサーを内蔵したウェアラブル機器を装着しました。
これによって、次のようなデータが細かく計測されました。
- 練習中の移動距離
- 高強度で動いた距離
- 加速と減速の回数
- Player Load(身体への総合的な負荷)
さらに練習は、テニスのプレー状況ごとに分類されました。
サーブ練習、リターン練習、ベースラインラリー、ネットプレー、そしてポイント形式のオールコート練習です。
こうして「どの練習がどれくらい身体を使うのか」が、初めて科学的に比較されたのです。
最も体力を使うのは、ベースライン練習
研究結果でまず明らかになったのは、練習メニューごとの身体負荷の違いでした。
最も身体負荷が大きかったのは、ベースラインラリーとオールコート練習でした。
理由は想像しやすいかもしれません。
ベースラインラリーでは、
- 左右の移動
- 前後の動き
- 加速と減速
が何度も繰り返されます。
ラリーが長く続けば続くほど、体への負担は大きくなります。
逆に、最も負荷が低かったのはサーブ練習でした。
サーブは技術的には難しいショットですが、移動距離はそれほど多くないため、身体負荷は比較的低かったのです。
ジュニアは「たくさん走る」テニス
この研究で最も興味深い結果は、ジュニアとプロの動きの違いでした。
ジュニア選手の方が、明らかに移動距離が多かったのです。
つまりジュニアのテニスは、
- たくさん走る
- 長いラリー
- 粘り合い
になりやすい。
実際、ジュニアの試合ではこうした展開がよく見られます。
まだ決定力が十分ではないためラリーが長く続き、ミスをしない選手がポイントを取る場面も少なくありません。
その結果、ジュニアのテニスは「走るスポーツ」になりやすいのです。
プロは「速く動く」テニス
一方でプロ選手は、移動距離そのものはジュニアより少ない傾向がありました。
しかしその代わりに、加速と減速の回数は多いという特徴がありました。
これはつまり、
- 短い距離を
- 素早く動き
- すぐ止まり
- また動く
というプレーが多いことを意味します。
プロテニスでは、
- ボールのスピード
- ショットの角度
- 展開の速さ
が大きくなります。
そのため重要なのは、長く走る能力よりも「速く動く能力」なのです。
研究者は、この違いの背景として
- ポジショニング
- 予測能力
- 戦術理解
などの成熟が関係している可能性を指摘しています。
ジュニア期の練習は、「速く動く能力」を育てる練習を取り入れる
ここから先は研究の結果を踏まえた一つの考え方ですが、ジュニア期の練習には大きなヒントがあります。
ジュニアの試合では、確かに持久力がある選手が有利になる場面があります。
そのため「とにかく走れる体を作る」練習が重視されることもあります。
しかしもし最終的に目指すのがプロのテニスであるなら、持久力だけを中心にした練習は十分ではないかもしれません。
むしろ重要なのは
- 初速(ファーストステップ)
- 加速
- 減速
- 切り返し
- ポジショニング
といった「動きの質」です。
つまりジュニア期には、走る力だけではなく、速く動く能力を育てる練習を取り入れることが大切なのかもしれません。
例えば
- ポイント形式の練習
- フットワークトレーニング
- アジリティトレーニング
- ポジショニングを意識した練習
などは、プロテニスにつながる能力を育てる可能性があります。
反対に、
- 長時間の単調なラリー練習
- ただ走るだけの持久力トレーニング
などは、やり過ぎると将来のテニスと少しズレてしまう可能性も考えられます。
将来につながるテニスを
ジュニアテニスでは、よく走る選手が勝つ場面が少なくありません。
しかし今回の研究は、プロテニスでは少し違う能力が求められる可能性を示しています。
ジュニアはたくさん走り、プロは速く動く。
この違いを知ることで、ジュニア期の練習の考え方も少し変わってくるかもしれません。
走れる体を作ることはもちろん大切です。
そのうえで、速く動く力や効率の良いフットワークを育てること。
それが、将来につながるテニスへの一歩になるのかもしれません。
引用元
Peñalva-Salmerón, F.J. et al. (2026).
External Load in High-Level Tennis Training: Influence of Game-Specific Drills in Junior and Professional Players Across Playing Situations.
Applied Sciences.

