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女子ジュニアを襲う見えないエネルギー不足――努力しても伸びない本当の理由【女子ジュニアの身体戦略②】

悲しむ女子テニスプレーヤー
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努力が足りないのではなく、エネルギーが足りていないのかもしれない。

「練習は誰よりもしているのに、なぜか結果が出ない」「以前より動けなくなった気がする」――そんな変化に悩む女子ジュニア選手は少なくありません。

本シリーズ第2部では、その背景にある“見えにくい問題”に目を向けます。キーワードは「エネルギー不足」と「身体からのサイン」。努力では解決できない問題が、そこには存在しています。

目次

“頑張っているのに伸びない”は、よくある現実

ジュニア期の女子選手において、「努力しているのにパフォーマンスが上がらない」というケースは決して珍しくありません。

・練習量は増えているのに結果が出ない
・試合になると動けない
・疲労が抜けない

こうした状態が続くと、「もっとやらなければ」と考えてしまいがちです。しかし実際には、その逆――“身体が限界に近づいている”サインであることも多いのです。

エネルギー不足が引き起こす「Relative Energy Deficiency in Sport」

この問題の中心にあるのが、「REDs(相対的エネルギー不足)」と呼ばれる状態です。

これは簡単に言うと、「消費エネルギーに対して、摂取エネルギーが足りていない状態」のことです。

重要なのは、「食べていない」ことだけが原因ではないという点です。

・練習量が増えた
・成長でエネルギー消費が増えた
・無意識に食事量が足りていない

こうした要因が重なることで、気づかないうちにエネルギー不足に陥ってしまいます。

国際オリンピック委員会(IOC)でも、この状態がパフォーマンス低下や健康リスクにつながることが示されています。

「REDs」は、多くの選手が抱えている問題

REDsは特別なケースではなく、実際の競技現場でも確認されている問題です。

例えば、IOCの報告では、持久系や審美系競技を中心に、多くの女子アスリートがエネルギー不足のリスクを抱えていることが指摘されています(Mountjoy et al., 2018)。

また、エネルギー不足は単に「疲れやすい」といったレベルにとどまりません。

・回復が遅れる
・ケガのリスクが高まる
・免疫力が低下する
・集中力が落ちる

といったように、パフォーマンス全体に影響が広がっていきます。

さらに深刻になると、骨密度の低下(疲労骨折のリスク増加)など、将来にも関わる問題へとつながる可能性があります。

パフォーマンス低下と「貧血」の深い関係

女子ジュニアに多い問題の一つが「鉄不足」です。

鉄は、体内で酸素を運ぶ役割を持つ重要な栄養素です。不足すると、

・持久力の低下
・疲労感の増加
・集中力の低下

といった影響が現れます。

女子アスリートの多くが直面する鉄不足

全米大学体育協会(NCAA)のデータでは、女子選手の中で鉄不足またはその傾向が見られる割合は競技によっては30〜50%にのぼるとも報告されています。

つまり、「気をつけた一部の選手だけの問題」ではなく、多くの選手が直面しうる課題なのです。

特にジュニア期の女子は、

・成長による鉄需要の増加
・月経による鉄の損失
・食事量の不足

が重なりやすく、知らないうちに不足状態に陥るケースも少なくありません。

実際には、

「走れていた距離が急にきつくなる」
「試合の後半で明らかに動けなくなる」

といった“プレーの変化”として現れることも多くあります。

特に月経が始まった後は、鉄の消耗が増えるため、より注意が必要です。

月経が止まるのは「良い状態」ではない

競技現場では時折、「月経が止まる=絞れている=良い状態」と誤解されることがあります。

しかし実際には、これは明確な“危険信号”です。

月経が止まるということは、身体が「これ以上エネルギーを使えない」と判断している状態です。
つまり、パフォーマンス以前に「身体の維持」が優先されている状態とも言えます。

アメリカスポーツ医学会(ACSM)でも、月経異常は健康リスクの重要な指標として位置付けられています。

研究によって差はありますが、女子アスリートにおいては、無月経や月経異常の経験がある割合は競技によっては20〜40%程度にのぼると報告されています(De Souza et al., 2014/ACSM関連研究)。

つまり、「特別なケース」ではなく、現場で起きている現実なのです。

そのまま続けると何が起きるのか

月経が止まった状態が続くと、身体にはさまざまな影響が出てきます。

・骨密度の低下(疲労骨折のリスク増加)
・回復力の低下
・慢性的な疲労感
・パフォーマンスの不安定化

特にジュニア期は「骨を作る重要な時期」でもあるため、このタイミングでの影響は将来にも関わる可能性があります。

なぜ気づけないのか――現場にある“見えにくさ”

この問題が厄介なのは、「分かりにくい」ことです。

・見た目は元気に見える
・本人が我慢してしまう
・努力しているため止めにくい

こうした要因が重なり、発見が遅れることが多くなります。

さらに、「頑張っているのに結果が出ない」という状況は、本人の自信を大きく削ってしまいます。
本来は身体の問題であるにもかかわらず、「自分が弱い」と感じてしまうのです。

回復できる問題だからこそ、早く気づく

ここで大切なのは、この状態は改善できるということです。

・エネルギー摂取を見直す
・練習量を調整する
・身体のサインに気づく

こうした対応によって、多くの場合パフォーマンスは回復していきます。

だからこそ、「気合い」や「根性」で乗り越えるのではなく、身体の状態を正しく理解することが重要です。

見えない不調に気づくことが、成長を守る

女子ジュニアのパフォーマンスは、「努力量」だけでは決まりません。
その土台にある“身体の状態”が大きく影響します。

・動けなくなった
・疲れが抜けない
・結果が出ない

こうした変化は、「もっとやれ」というサインではなく、「見直すべきタイミング」かもしれません。

見えない不調に気づけるかどうか。
それが、長く強く成長できるかどうかを分ける分岐点になります。

次回の第3部では、こうしたリスクを防ぎながらパフォーマンスを高めていくための具体的な方法――「トレーニング・栄養・関わり方」についてお伝えします。

引用元

International Olympic Committee(IOC)/REDs Consensus Statement
American College of Sports Medicine(ACSM)/Female Athlete Triad
NCAA/Female Athlete Health Data

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