画面の向こうの相手は、思っている以上に近く、思っている以上に遠い。
前回の記事では、遠征や合宿で起こりやすい恋愛トラブルについて考えました。

今のジュニア選手たちは、遠征先で知り合った仲間ともSNSを通じて簡単につながることができます。InstagramやLINE、TikTokなどを通じて交流が続き、そこから友情や恋愛感情が生まれることも珍しくありません。
SNSは便利なツールです。しかし、顔を合わせないコミュニケーションだからこその難しさやリスクもあります。
今回は、ジュニア選手とSNS、そして恋愛との向き合い方について考えてみたいと思います。
SNSは出会いを広げる便利なツール
まず知っておきたいのは、SNSそのものが悪いわけではないということです。
実際、テニスは全国各地、時には海外の選手とも交流する機会があるスポーツです。遠征先で仲良くなった選手と連絡を取り合ったり、試合結果を共有したり、お互いを応援し合ったりすることもあります。
以前であれば、大会が終われば関係も終わってしまうことが少なくありませんでした。しかし今はSNSによって、離れた場所にいる仲間ともつながり続けることができます。
テニスを通じて出会った仲間との交流は、選手にとって大きな財産になることもあるでしょう。
だからこそ大切なのは、SNSを使わないことではなく、上手に使うことです。
SNSでは相手のすべては見えない
一方で、SNSには難しい側面もあります。
それは、相手の一部しか見えないことです。
例えば、
- 優しいメッセージを送ってくれる
- 試合を応援してくれる
- 自分の話をよく聞いてくれる
そんな相手に好意を持つことは決して不思議ではありません。
しかし、SNSで見えているのは、その人のほんの一部分です。
実際に会っている人間関係であれば、
- 友人への接し方
- 約束の守り方
- 困ったときの行動
- 周囲への思いやり
など、さまざまな面を見ることができます。
しかしSNSだけでは、それらを知ることは簡単ではありません。
また、SNSでは相手が本当に同年代なのか、プロフィール通りの人物なのかを確認することも簡単ではありません。
だからこそ、「SNSで優しい人=信頼できる人」とは限らないことも知っておく必要があります。
恋愛感情が生まったときほど、相手を冷静に見ることが難しくなることもあるのです。
恋愛がスマホ中心になると起こりやすいこと
SNSでのやり取りが増えると、スマートフォンが恋愛の中心になることがあります。
例えば、
- 返信が来るまで気になってしまう
- 既読になったのに返事がなくて落ち込む
- 夜遅くまでやり取りを続ける
- 練習中も通知が気になってしまう
こうした経験は、大人でも珍しくありません。
しかし、ジュニア選手にとっては競技への集中力や睡眠時間に影響することがあります。特に世界を目指す選手にとって、睡眠や回復はトレーニングの一部です。
恋愛そのものではなく、恋愛によって生活のバランスが崩れてしまうことが問題なのです。
スマートフォンは便利な道具ですが、使われる側にならないことも大切です。
SNS時代は「別れた後」も難しい
以前の恋愛であれば、学校や遠征先で会わなければ距離を置くこともできました。
しかしSNSでは、
- 相手の投稿が目に入る
- 共通の友人の投稿で近況が分かる
- オンライン上でつながり続ける
といったことが起こります。
そのため、別れた後も気持ちの整理に時間がかかることがあります。
恋愛が終わったからといって、自分の価値まで失われるわけではありません。
SNSとの距離を一時的に取ることも含めて、自分の心を守る方法を知っておくことが大切です。
「好きだから大丈夫」が危険なこともある
恋愛感情が生まれると、人は相手の良い部分を見やすくなります。
これはジュニア選手だけでなく、大人でも同じです。
そのため、
- 個人情報を教えてしまう
- 遠征の予定を詳しく伝えてしまう
- プライベートな写真を送ってしまう
- 保護者に内緒でやり取りを続ける
といった行動につながることがあります。
もちろん、多くの交流は健全なものです。
しかし、
「好きだから大丈夫」
「仲良くなったから大丈夫」
という考え方には注意も必要です。
相手のことを信頼することと、自分自身を守ることは別の話です。
好きな相手だからこそ、慎重になることも大切なのです。
保護者やコーチができること
SNSの話になると、つい監視や制限に意識が向きがちです。
しかし、すべてを禁止することは現実的ではありません。
大切なのは、SNSを使うなと言うことではなく、使い方について話し合うことです。
例えば、
- 知らない人とのやり取りは慎重にする
- 個人情報を簡単に公開しない
- 困ったことがあれば相談する
こうしたルールを共有しておくことは大きな意味があります。
スマートフォンやSNSが心や身体に与える影響については、こちらの記事でも詳しく解説しています。

また、恋愛感情そのものを否定しないことも大切です。
否定されると、子どもは相談しなくなります。
本当に危険なのは、問題が起きたときに誰にも相談できなくなることです。
「何かあったら相談していい」
そう思える関係を作ることが、保護者やコーチにできる最大のサポートかもしれません。
SNSは恋愛の代わりではない
SNSは便利なツールですが、本来の人間関係を作る場所ではありません。
人との信頼関係は、表情を見て、言葉を交わして、同じ時間を過ごす中で少しずつ育っていくものです。
SNSは、その関係を支えるための道具の一つに過ぎません。恋愛も同じです。
スマートフォンの画面だけで相手のすべてを知ることはできません。だからこそ、SNSの向こうにいる相手を大切にすると同時に、自分自身を大切にすることも忘れてはいけないのです。
まとめ
SNSは、遠征先で出会った仲間とのつながりを広げてくれる便利なツールです。しかし、その便利さの裏には、相手のことを十分に知らないまま信頼してしまうリスクもあります。
恋愛感情が生まれることは悪いことではありません。
ただし、「好き」という気持ちがあるときほど、冷静な判断が難しくなることもあります。
だからこそ、
相手を大切にすること。
そして、自分自身を大切にすること。
その両方を忘れないことが、SNS時代の恋愛には求められているのかもしれません。
次回は、このテーマの延長線上にある「グルーミング」について考えます。個人スポーツに起こりうる問題で、保護者や選手が知っておきたい大切なテーマです。

引用元
Furman, W. & Shaffer, L. (2003). The Role of Romantic Relationships in Adolescent Development.
Subrahmanyam, K., & Greenfield, P. (2008). Online Communication and Adolescent Relationships.
Valkenburg, P. M., & Peter, J. (2011). Online Communication Among Adolescents.
Deci, E. L. & Ryan, R. M. (2000). Self-Determination Theory and the Facilitation of Intrinsic Motivation, Social Development, and Well-Being.

