非日常の高揚感は、時に判断力を鈍らせる。
前回の記事では、「恋愛は悪いことではない。しかし、夢より大きくしてはいけない」というテーマで、ジュニア選手と恋愛の向き合い方について考えました。

テニスを続けていると、全国大会や遠征、合宿などを通じて普段は出会えない仲間と知り合う機会があります。同じ夢を追う選手同士だからこそ、友情や憧れ、時には恋愛感情が生まれることもあるでしょう。
しかし、遠征や合宿は日常とは異なる特別な環境です。だからこそ、普段ならしないような行動を取ってしまったり、冷静な判断ができなくなったりすることもあります。
今回は、遠征先で起こりやすい恋愛トラブルと、その向き合い方について考えてみたいと思います。
なぜ遠征先では恋愛感情が生まれやすいのか
遠征や合宿には、恋愛感情が生まれやすい条件がそろっています。
同じ競技に打ち込み、同じ目標を持ち、同じ時間を過ごす。
試合の緊張や勝利の喜び、敗戦の悔しさを共有する中で、相手を特別な存在として意識することは決して不思議なことではありません。
心理学の研究では、人は強い感情を共有する相手に親近感を抱きやすいことが知られています。
試合前の緊張感や勝負の興奮も、その一つかもしれません。
また、遠征先では保護者から離れ、自立した環境で過ごすことになります。
- いつもと違う景色
- いつもと違う仲間
- いつもと違う時間
そんな非日常の環境は、人の気持ちを大きく動かすことがあります。
だからこそ、遠征先で誰かを好きになること自体は決して珍しいことではありません。
問題は恋愛ではなく「バランス」
遠征先で恋愛感情が生まれること自体は自然なことです。
しかし、問題になるのはその感情が競技や生活の中心になってしまう場合です。
例えば、
- 試合より相手のことが気になる
- スマートフォンばかり見てしまう
- 練習中も相手の反応が気になる
- 負けた悔しさより恋愛の悩みが頭を占める
こうした状態になると、本来の目的である遠征や大会への集中が難しくなります。
世界を目指す選手ほど、限られた遠征の時間をどのように使うかが重要になります。
恋愛をしてはいけないのではありません。
恋愛によって、自分の目標を見失わないことが大切なのです。
「みんな行くから大丈夫」が危険なこともある
遠征や合宿では、試合や練習が終わった後に選手同士で集まることがあります。
交流そのものは悪いことではありません。
同じ競技に取り組む仲間との会話は、視野を広げる貴重な機会にもなります。
しかし、
「ちょっと部屋に来ない?」
「みんな集まっているから大丈夫だよ」
という誘いが、後になってトラブルにつながることもあります。
実際には、
- 男女が同じ部屋に集まる
- 消灯後に部屋を行き来する
- 引率者が把握していない場所で過ごす
といったケースが起きることもあります。
その場では軽い気持ちだったとしても、人間関係のトラブルや誤解につながることがあります。
また、思春期の年代は、
「断ったら空気が悪くなるかもしれない」
「みんな行くなら自分も」
と考えやすい時期でもあります。
だからこそ大切なのは、「みんなが行くから」ではなく、「自分はどうしたいか」で判断することです。
世界で活躍する選手たちを見ると、試合だけでなく日常の行動や判断も大切にしていることが分かります。
周囲の雰囲気に流されないことも、大切な競技力の一つなのかもしれません。
世界を目指す選手ほど自己管理が求められる
世界のトップ選手たちは、試合中だけでなく、試合以外の時間の使い方にも高い意識を持っています。
- 睡眠
- 食事
- リカバリー
- 人間関係
これらすべてが競技パフォーマンスに影響することを理解しているからです。
ジュニア年代では、まだ完璧にできなくて当然です。
しかし、将来世界を目指したいのであれば、「今、自分は何のために遠征へ来ているのか」を考える習慣は持っておきたいところです。
恋愛も友情も大切です。
しかし、遠征の主役はあくまでもテニスです。
その軸を見失わないことが、長い競技人生につながっていきます。
保護者やコーチはどう見守ればいいのか
こうした話をすると、「だから恋愛は禁止した方がいい」と考える方もいるかもしれません。
しかし、それは現実的ではありません。
人を好きになる気持ちを禁止することはできませんし、無理に抑え込もうとすると、かえって隠れて行動するようになることもあります。
保護者やコーチにできることは、監視することではなく、事前に話し合うことです。
例えば、
- 遠征中のルールを確認する
- 困ったときは相談してよいことを伝える
- 恋愛感情そのものを否定しない
こうした関係づくりが、結果として選手を守ることにつながります。
危険なのは、誰に相談することもできず追い込まれてしまうことです。
ですので伝えるべきは、「恋愛するな」ではなく、「自分を大切にできる行動を選ぼう」というメッセージではないでしょうか。
年齢によって必要なサポートは違う
もちろん、すべてのジュニア選手が同じではありません。
高校生に近い年代であれば、自分で考え、自分で判断する経験も大切です。
一方で、小学生や中学生前半の選手は、まだ長期的な結果を予測したり、その場の雰囲気に流されず判断したりする力が発達の途中にあります。
そのため、
- 夜間の部屋の行き来
- 保護者や引率者が把握していない行動
- ルールを超えた交友関係
などについては、「本人の判断に任せる」だけではなく、大人が適切に見守ることも必要です。
これは恋愛を禁止するためではありません。
子どもたちが安全に成長し、自分で判断できるようになるまで支えるためです。
ジュニア期は自立への途中段階です。
だからこそ、自由と責任を少しずつ学べる環境を整えることが大切なのです。
まとめ
遠征や合宿は、テニスの技術だけでなく、人間としても大きく成長できる貴重な機会です。
そこで友情が生まれることもあれば、恋愛感情が芽生えることもあるでしょう。
それ自体は決して悪いことではありません。
しかし、遠征という非日常の環境では、気持ちが大きく動きやすいことも事実です。
だからこそ大切なのは、その場の雰囲気に流されるのではなく、自分で考え、自分で判断すること。
恋愛もまた、人との関わり方を学ぶ経験の一つです。
遠征先で出会う人との時間を大切にしながらも、自分の夢や目標を見失わないこと。
そして、迷ったときには一人で抱え込まず、保護者やコーチに相談することも忘れないでください。
それが、ジュニア選手にとって大切な恋愛との向き合い方なのかもしれません。
さて次回は、遠征先で知り合った選手とも簡単につながれる時代だからこそ知っておきたい、「SNSから始まる恋愛」について考えてみたいと思います。

引用元
Furman, W. & Shaffer, L. (2003). The Role of Romantic Relationships in Adolescent Development.
Smith, A. L., Ullrich-French, S., Walker, E., & Hurley, K. S. (2006). Peer Relationship Profiles and Motivation in Youth Sport.
Deci, E. L. & Ryan, R. M. (2000). Self-Determination Theory and the Facilitation of Intrinsic Motivation, Social Development, and Well-Being.

